研究課題/領域番号 |
20H02534
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
浅野 竜太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80323103)
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研究分担者 |
稲田 全規 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80401454)
安永 正浩 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 分野長 (80450576)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 二重特異性抗体 / プロドラッグ / プロテアーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では、がん特異的プロテアーゼの認識配列を二重特異性抗体に巧みに組み込むことで、高分子量型と低分子量型二重特異性抗体の両長所のみを併せ持ち、かつ免疫細胞に対して低親和性型から高親和性型に腫瘍送達後に構造変換するプロドラッグ化デザインの開発を目指している。 本年度は、主に、1. 長体内滞留型から高組織浸透型へのがん特異的な構造変換デザインの開発、2. T細胞に対する低親和性型から高親和性型へのがん特異的構造変換デザインの開発、および、3. プロドラッグ化二重特異性抗体の作用機序解析、の観点から研究を進めた。 1.長体内滞留型から高組織浸透型へのがん特異的な構造変換デザインの開発: これまでに構築してきた、がん細胞表面抗原としてヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)とT細胞表面抗原としてCD3を標的としたFc融合型二重特異性抗体をモデルに研究を進めた。がん細胞で発現が亢進しているプロテアーゼに認識される配列をFc領域の融合部位に挿入させた二重特異性抗体のプロテアーゼ切断検討を行った結果、特異的な切断が観察された。 2.T細胞に対する低親和性型から高親和性型へのがん特異的構造変換デザインの開発: EGFRはがん関連抗原ではあるものの、やはり正常細胞にも発現しており、二重特異性抗体が介する正常組織の障害が懸念される。そこで、T細胞に対する抗体の結合を阻害するような配列の取得を目指した。構造情報を基に設計した阻害配列と、阻害特異性はないものの立体障害による阻害が期待できるアミノ酸ポリマーを検討した結果、後者に、より強いT細胞への結合阻害活性が認められた。 3.プロドラッグ化二重特異性抗体の作用機序解析: 担がんマウスを用いたイメージングに向けて、1.で開発を進めるプロドラッグ化二重特異性抗体の蛍光標識検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、1.長体内滞留型から高組織浸透型へのがん特異的な構造変換デザインの開発、に関して、がん細胞で発現が亢進しているプロテアーゼに認識される配列をFc領域の融合部位に挿入させた二重特異性抗体のプロテアーゼ切断検討を行い、特異的な切断を観察した。また、2.T細胞に対する低親和性型から高親和性型へのがん特異的構造変換デザインの開発、については構造情報を基に設計した阻害配列と、阻害特異性はないものの立体障害による阻害が期待できるアミノ酸ポリマーを検討した結果、後者に、より強いT細胞への結合阻害活性が認められた。さらに、3.プロドラッグ化二重特異性抗体の作用機序解析、に関しては担がんマウスを用いたイメージングに向けて、1.で開発を進めるプロドラッグ化二重特異性抗体の蛍光標識検討を行った。以上より、研究の進捗を総合的に判断し、おおむね順調に進展している、とした。
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今後の研究の推進方策 |
1. 長体内滞留型から高組織浸透型へのがん特異的な構造変換デザインの開発、に関しては、導入した配列を認識するプロテアーゼを発現しているがん細胞を用いた評価へと進める予定である。
2. T細胞に対する低親和性型から高親和性型へのがん特異的構造変換デザインの開発、に関しては、アミノ酸ポリマーの重合度を変化させ、より結合阻害活性の高い配列を、二重特異性抗体の発現量も加味しつつ検討する予定である。
3. プロドラッグ化二重特異性抗体の作用機序解析、に関しては、導入した配列を認識するプロテアーゼの発現が亢進しているがん細胞を用いて三次元腫瘍塊を形成させ、二重特異性抗体の浸透性評価を進める予定である。
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