研究課題/領域番号 |
20H02535
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
福田 淳二 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (80431675)
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研究分担者 |
景山 達斗 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 「再生毛髪の大量調整革新技術開発」プロジェクト, 研究員(任期有) (40822177)
大久保 佑亮 国立医薬品食品衛生研究所, 毒性部, 主任研究官 (80596247)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 毛髪再生医療 / ティッシュエンジニアリング / 毛包上皮幹細胞 / マイクロデバイス |
研究実績の概要 |
本研究では、毛包を構成するヒト毛包幹細胞を用いて毛髪再生医療のための基盤技術を確 立することを目的としている。研究計画書には具体的な研究項目として、1) 3次元培養による毛包上皮幹細胞の増殖技術、2) 電気刺激培養による毛乳頭細胞の増殖技術、3) バイオプリンタを利用した毛包原基の作製技術を記載した。 研究初年度は、1) 3次元培養による毛包上皮幹細胞の増殖技術について、特に重点的な検討を行った。我々は、複数のマイクロウェルをアレイしたシリコーンゴム製の培養器に毛包上皮幹細胞を播種すると各マイクロウェルで凝集塊を形成すること、さらにここにマトリゲルを添加して包埋培養すると、毛包上皮幹細胞のステムネスを維持したまま温和な増殖がみられることを発見した。当該培養器が酸素透過性のシリコーンゴムであることが凝集培養している細胞に十分な酸素を届ける上で重要であることも確認している。本研究では、マウス胎児由来細胞を用いて得られたこの結果が、ヒト由来細胞を用いて同様に再現できるか検討した。脱毛症患者の毛包組織から毛包上皮幹細胞を分離し、まずは平面培養において培養培地組成について検討した。細胞数と毛包上皮幹細胞マーカーであるCD200の発現を指標として培養培地を決定した。そして、マイクロウェルアレイ培養器を用いて、細胞凝集塊を形成させて培養したところ、マウス胎児由来細胞と同様に本手法でCD200陽性細胞の数が徐々に増加することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年間の研究期間のうち初年度は、1) 3次元培養による毛包上皮幹細胞の増殖技術について重点的に検討し、マウス胎児由来細胞で確立した技術が脱毛症患者由来の細胞に適用可能であることを示した。この内容は研究計画書に記載の通りのものであるが、毛髪再生医療の分野では毛包上皮幹細胞の増殖技術が大きな課題の一つとなっていることから、これを実現できる可能性のある技術が開発できたことは当該分野では大きな意味がある。また、2) 電気刺激培養による毛乳頭細胞の増殖技術および3) バイオプリンタを利用した毛包原基の作製技術について、同時並行で検討を進めており、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2) 電気刺激培養による毛乳頭細胞の増殖技術および3) バイオプリンタを利用した毛包原基の作製技術について、重点的に検討する。2)については、すでに予備実験においてヒト毛乳頭細胞に効果があることが分かっていることから、より長期的(継代4-5回程度)な効果を評価する。また、電気刺激はイオンチャネルを介して細胞の遺伝子発現に作用することが知られているが、遺伝子網羅解析により活性化されている遺伝子やシグナル伝達経路を明らかにし、そのメカニズムを解明する。一方、3)については、1)および2)にて得た毛包上皮幹細胞および毛乳頭細胞を用い、バイオプリンタによりコラーゲン液滴を隣接配置することで毛包原基を形成させる。そして、これを免疫不全マウスに移植して毛髪再生能を評価し、毛髪再生医療のための基盤技術として有用であることを示す。
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