1.発育鶏卵でインフルエンザウイルス株の増殖には漿尿膜上に存在する糖鎖が必要であり、この糖鎖をヒト型化できれば、理論上ヒトウイルスを馴化プロセスなしで増やせるようになる。また、発育鶏卵での増殖が極端に低いワクチン株を効率よく増殖させることが可能となる。このために、Creリコンビナーゼを発現するニワトリと、プロモーターと糖転移酵素の間をスタッファーで区切った2種のニワトリ系統が必要となるが、後者の遺伝子導入PGCを移植した胚を孵化させて得た生殖腺キメラニワトリの交配を進めた。その結果目的のトランスジェニックニワトリ系統の樹立に成功した。生まれた個体はスタッファーとして挿入した蛍光タンパク質遺伝子を強く発現しており、スタッファーを除去した際には目的遺伝子を強く発現できることが期待された。成熟後の2系統のニワトリの交配を開始している。得られた卵を解析することで糖鎖変換とインフルエンザウイルスの増殖を評価する必要がある。 2.過剰発現させると培養PGCの増殖を阻害する糖転移酵素について、哺乳類においては酵素活性を失わせることが既知の変異体の遺伝子を導入したところ、やはり増殖が阻害されることが観察された。酵素活性に寄らない影響がある可能性が示唆される一方、酵素活性による影響の程度を評価する必要があることが示された。定量的な解析を行うための発現系を作製中である。 3. 減数分裂関連遺伝子の1つを片アレルでのみノックアウトしたPGCを移植して作製した生殖腺キメラニワトリを成熟させ、精子を採取して調べたところ移植したPGC由来の精子が含まれていることが示された。この個体を正常雌と交配し得られた次世代個体をスクリーニングしたが、目的のノックアウトニワトリは得られなかった。
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