研究課題/領域番号 |
20H02539
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中谷 肇 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (80456615)
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研究分担者 |
堀 克敏 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (50302956)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗菌物質同定 / 表皮細菌叢解析 |
研究実績の概要 |
ゼブラフィッシュの表皮より単離した有用細菌であるPseudomonas mosselii KHZF1について、その抗菌作用や病害防除効果のメカニズムを探索するために、KHZF1が生産する抗菌物質の同定と、病害防除作用を示す投与方法の最適化、病害防除効を示す条件と示さない条件における表皮細菌叢の解析をおこなった。 抗菌物質の同定では、KHZF1株の培養上清に、抗菌物質が生産されていることをディスク拡散法で確認した後、培養上清を有機溶媒抽出し、抗菌活性を示す画分を得た。得られた画分をシリカゲルクロマトグラフィ―及びHPLCでさらに分画することで、抗菌物質を精製し、精製した抗菌物質のMS解析から分子量を決定し、NMRにより化学構造の候補を3種類に絞った。さらに精製した抗菌物質の結晶化を行い、X線結晶構造解析により抗菌物質が既知物質であるpseudoiodininであることが判明した。pseudoiodininはPseudomonas fluorescens var. pseudoiodinumが生産する色素として知られていたが、今回Pseudomonas mosselii KHZF1も生産することが明らかとなった。 KHZF1の病害防除効果について、その投与方法による違いを確認したところ、複数回の投与を行わないと効果を示さないことが判明した。効果を示さない1回投与の場合と、効果を示す2回投与の場合について、投与後の表皮細菌叢の解析を行ったところ、1回投与の場合は表皮細菌叢の有用菌の割合が少なく、逆に病原菌に占有されている個体が多く見られた一方で、二回投与場合はほとんどの個体が表皮細菌叢がKHZF1に占有されていた。このような有用菌の占有率の違いが、病害防除効果の違いとして現れたものと推定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細菌叢解析では新型コロナウイルスの感染拡大の影響に伴う物流の減少や、ウイルスの解析と関連する試薬の入手難などがあり、次世代シーケンサーの運転に必要な物品の入手が困難となったため、計画通りの解析が行えない部分があった。現在は入手難は改善しつつあるため今後は予定通りに解析が進むと思われる。一方で、抗菌物質の同定に関しては、既知物質ではあったものの、予定よりも早く物質の精製や同定が完了した。したがって、全体的に見れば研究は順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
抗菌物質の同定に関しては、既知の化学物質であるにも関わらず、構造や抗菌活性に関する文献情報が混乱しているので、正確な抗菌活性の測定を進めていくと共に、生合成経路や関与する遺伝子などが全く明らかにされていないので、KHZF1のゲノム解析を行い、これを明らかにしていく。また、KHZF1の病害防除効果について、菌叢解析による投与後の動態解析(表皮以外の組織も含む)を行うことが十分できなかったためこれを進めていく。 投与回数の違いによる有用菌の表皮占有率の違いがなぜ起こるのかについても、抗菌物質が表皮細菌叢に与える影響と関連していると考えられるため、pseudoiodininが表皮細菌叢に与える影響に注目して探索していく予定である。
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