モデル魚類であるゼブラフィッシュより取得した、魚類の病原菌の増殖を抑える共生細菌Pseudomonas mosselii KHZF1のゼブラフィッシュにおける体内動態を探索するために、投与後に鰓、腸、皮膚を採取し菌叢解析を行ったところ、KHZF1は投与後は主に表皮と腸管に存在することが示唆された。KHZF1が生産する抗菌物質Pseudoiodinineについて、感染防除効果との関連性を明らかにするため、精製した抗菌物質をゼブラフィッシュに投与したところ、魚類病原菌の最小増殖阻害濃度よりも低い100ng/mlで毒性を示し、魚が斃死した。ことからPseudoiodinineが病害防除効果を示すためには菌体と共にプロバオティクスとして投与する必要があることが示された。50ng/ml以下の低濃度でゼブラフィッシュにPseudoiodinineを投与した時の表皮細菌叢の変化を解析したところ、Pseudomonas属細菌の表皮細菌叢における占有率を上昇させる効果があることが示された。この結果から、低濃度のPseudoiodinineが表皮での有用細菌の優先化を促進することが示唆された。でKHZFが持つ抗菌物質生産に関わる遺伝子を同定するために、KHZF1の全ゲノム配列をアッセンブルし、ゲノム上にコードされている遺伝子をアノテーションした。プラスミドなどのゲノム以外のDNAは保持していなかった。抗菌物質を生産する条件で得られた発現遺伝子のデータをゲノム上にマッピングし、発現量が増加もしくは減少している遺伝子の解析を行ったが、多数の遺伝子が該当し、抗菌物質生産に関わる遺伝子の特定にまでは至らなかった。 今後は表皮プロバイオティクスのメカニズム探索のために、KHZFが生産する抗菌物質Pseudoiodinineが、実際の病害防除効果の発揮にどのように関わっているかを明らかにする研究を継続する。
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