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2020 年度 実績報告書

低分子ハイドロゲル機能化の学理

研究課題

研究課題/領域番号 20H02542
研究機関神戸大学

研究代表者

丸山 達生  神戸大学, 工学研究科, 教授 (30346811)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード超分子 / バイオマテリアル / 自己組織化 / ゲル
研究実績の概要

これまでの実験検討から申請者らは、ペプチド脂質タイプの低分子ハイドロゲル化剤およびNアセチル化ペプチドタイプの低分子ハイドロゲル化剤の開発に成功している。Nアセチル化ペプチドタイプの低分子ゲル化剤においては、D体ペプチドおよびL体ペプチドを作製し、どちらもヒト細胞に対して毒性が低いこと、微生物等もこのゲルの上で培養可能であることを見出した。しかも興味深いことに、ある種の抗生物質の機能をこのゲルにより封印可能であることを発見した。これはゲル化剤分子の自己組織化体に抗生物質が包埋されているからだと思われる。ゲルの崩壊と共に抗生物質機能が回復することも確認している。Nアセチル化ペプチドの分子間相互作用についてもIsothermal titration calorimetryを用いて解析し、アミノ酸配列、疎水性相互作用と静電的相互作用が重要であることを見出した。X線結晶構造解析にも成功し、Isothermal titration calorimetryの考察と良い一致を見ている。また偶発的に、D体ペプチドとL体ペプチドの想定外の相互作用も発見した。学内専門家の協力の下、計算機を用いた分子動力学シミュレーションもはじめており、当初予定通りに研究が進んでいる。一方、毒性のあるペプチド脂質タイプの低分子ハイドロゲル化剤については、正常細胞とは異なるガン細胞内に特徴的な微小環境に応答して自己組織化させることに成功し、特定のガン選択的細胞毒性の発揮につながっている。細胞内でのゲル化剤分布の可視化にも成功した。培養細胞を用いた検証のみならず動物実験にまで進んでいる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画していた、各種低分子ゲル化剤の細胞毒性評価も進んでおり、かつNアセチルペプチドタイプの低分子ゲル化剤に特徴的な機能も発見した。低分子ゲル化剤の分子間相互作用の解析も進んでおり、計画通りである。ペプチド脂質タイプの細胞毒性を特定のガン細胞選択的に発揮させることにも成功しており、概ね想定通りである。

今後の研究の推進方策

i) 三次元細胞培養用ゲル
再生医療に必要とされる通常のヒト細胞は、接着する“場”を必要とする。そのためコラーゲンコートシャーレのような平らな“場”を用いると二次元培養が可能であるが、組織形成には三次元培養が必要となる。一方、低分子ハイドロゲルは高分子ゲルに比して強度が弱いため、培地成分の浸透も容易であり、細胞伸張・増殖が可能な柔らかさを有する。つまり低分子ゲル中での細胞培養が期待できる。そこで開発した低毒性低分子ゲルを用いて三次元培養に挑戦する。現時点では、低分子ゲルに細胞接着性能はない。そこで細胞接着ペプチドを導入したゲル化剤を開発する。これを用いて、まずゲル表層での細胞接着および培養を実証する。続いて、この細胞接着性ゲルを用いることで三次元培養可能であることを実証する。
ii) 菌選択的抗菌ゲル
抗菌剤等の生理活性物質には、複数種の分子が存在したときにその生理活性が発現する。例えば、アンホテリシンB(分子量924)はエルゴステロール(分子量397)という脂質が共存すると強力な殺菌活性を発現する。一般的に、このアンホテリシンBはエルゴステロールを有する真菌類に対して殺菌効果を示す。そこで、アンホテリシンBを低分子ゲルに組み込むことを試みる。アンホテリシンBは水溶性が低く、疎水性が強い低分子のため、低分子ゲル化剤自己組織体中の疎水空間に取り込まれる可能性が高い。これにより真菌類に対して選択的殺菌性を示す抗菌低分子ゲルを作製する。うまくいかない場合は、低分子ゲル化剤分子の疎水性を高める分子設計をし、これら抗菌剤との親和性を高める予定である。
次に、上述のアンホテリシンB含有抗菌低分子ゲルにエルゴステロールを組み込み、真菌以外の菌類に対して幅広く抗菌性を示す抗菌低分子ゲルを開発する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] Preparation of affinity membranes using polymer phase separation and azido-containing surfactants2021

    • 著者名/発表者名
      Morita Kenta、Takeda Shinano、Yunoki Ayumi、Tsuchii Takane、Tanaka Tsutomu、Maruyama Tatsuo
    • 雑誌名

      Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects

      巻: 611 ページ: 125802~125802

    • DOI

      10.1016/j.colsurfa.2020.125802

    • 査読あり
  • [学会発表] ペプチド型低分子ゲル化剤を用いた疎水性薬剤の剤形および効能の調節2021

    • 著者名/発表者名
      森田 健太・ Restu Witta Kartika・西村 勇哉・ 石井 純・丸山 達生
    • 学会等名
      化学工学会第86年会
  • [学会発表] 短鎖L体ペプチドと短鎖D体ペプチドの混合による自己組織化条件の検討2021

    • 著者名/発表者名
      清水 なつみ・金光 彩雪・ 八代 朋子・丸山 達生
    • 学会等名
      第23回化学工学会学生発表会
  • [学会発表] チロシンキナーゼ応答性ペプチド脂質を用いたガン細胞の選択的殺傷2021

    • 著者名/発表者名
      瀬口 史歩・槌井 貴嶺・ 金光 彩雪・ 森田 健太・ 丸山 達生
    • 学会等名
      第23回化学工学会学生発表会
  • [学会発表] Detoxification of melittin by indole derivatives2020

    • 著者名/発表者名
      Sayuki Kanemitsu, Yudai Tominaga, Kanon Nishimura, Haruka Sakurai, Atsuo Tamura, Tatsuo Maruyama
    • 学会等名
      10TH International COLLOIDS CONFERENCE
    • 国際学会
  • [学会発表] Detoxification of melittin by compounds with an indole ring2020

    • 著者名/発表者名
      Sayuki Kanemitsu, Yudai Tominaga, Kanon Nishimura, Haruka Sakurai, Atsuo Tamura, Tatsuo Maruyama
    • 学会等名
      3rd GLowing Polymer Symposium in KANTO
    • 国際学会

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公開日: 2023-12-25  

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