令和4年度は,本課題の遂行過程で見出した,ポリスチレン粒子粗表面に結合させたホスフォエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(PEPC)が気液二相流中において安定に機能発現する現象を利用した炭素固定バイオリアクターの開発を行った。具体的な成果を示す。 (1)ポリスチレン粒子とPEPCの相互作用:カルボキシ基をもつポリスチレン粒子表層へのPEPCの物理吸着は低レベルであることを明らかにした。また,ポリスチレン粒子へのPEPCの共有結合性や結合効率について,粒子の酵素活性や未結合酵素の定量等の手法により多角的に検討して,固定化PEPC粒子が炭素固定反応系への適用に十分な酵素活性をもつことを明らかにした。 (2)気液二相流中における遊離PEPCの特徴:気液二相流中における遊離PEPCの安定性について,形状が異なる外部循環式エアリフト型気泡塔や通気ガス中の二酸化炭素濃度,反応時間の影響等を検討した。その結果,遊離PEPCは,気泡塔において,炭素固定活性をほぼ発現しないことを明確にした。これらに基づき,PEPCをポリスチレン粒子へ固定化すると,本酵素反応の安定性が著しく向上することを示した。さらに,リポソームに結合させた炭酸脱水酵素が,遊離酵素に比べて気液二相流中において高い安定性を発現する現象について,気泡塔操作条件の効果を明らかにした。 (3)二酸化炭素含有ガスを通気した気泡塔による炭素固定操作:固定化PEPC粒子を懸濁させた気泡塔に二酸化炭素を通気して,種々の条件下においてホスフォエノールピルビン酸への炭素付加によるオキサロ酢酸生成反応を行った。酵素を固定化していない粒子は,触媒活性を発現しなかった。一方,固定化PEPC粒子は,気泡塔における繰り返し反応操作において活性を発現した。また,攪拌槽型反応器を用いた反応操作を行い,固定化PEPC活性に及ぼす反応装置形状の影響を明らかにした。
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