研究課題
本研究では、半導体量子ドット (QD) がナノスケールで秩序配列し高次構造体を形成することにより新たに発現する光機能を見出すとともに、その起源を超高速光励起ダイナミクスの視点から解明し、機能をさらに高度化する指針を得ることを目的としている。前年度までに研究対象としたCdTe以外のQDを用いてQD秩序構造体を作製するとともに、その光物性と温度依存性を系統的に調べることにより、量子共鳴の次元制御方法の汎用性を検証した。水熱合成法によりCdSe、CdSe/ZnS、及びZnSe QDを合成し、Layer-by-layer (LBL) 法によりQDナノ秩序構造体を作製した。上記のQDを用いた場合も、LBL法に用いるQD溶液濃度とQD層間距離を制御することにより、QDナノ秩序構造体における面内および積層方向の距離を精密に制御できることを明らかにした。新たに構築したフェムト秒過渡吸収分光システムにより、前年度までに抽出した計測最適化条件に基づいてQD秩序構造体の超高速光励起ダイナミクス計測を進めた。LBL法により作製したCdTeやCdSe QDに対して、基底状態ブリーチングと励起状態吸収のシグナルを検出し、その時間発展を100 fs以下の分解能で計測することに成功した。”集積化の効果”を明らかにするために、高分子フィルムに分散したQDについて同様の計測を行い比較した。その結果、LBL試料では励起状態吸収に由来する信号がフィルム分散試料よりも大幅に短寿命化していることが明らかとなった。これは、QD秩序構造体におけるミニバンドの形成によりQD間の電子移動が可能となることで、エネルギー緩和の確率が著しく増大したことに由来すると考えられる。これらの結果はQD秩序構造体において期待される高い電荷伝達特性の起源を解明する糸口となると考えられる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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