研究実績の概要 |
・インコヒーレント光マニピュレータの開発 従来まで光マニピュレータとは、「レ―ザーマニピュレータ」であった。つまり、捕捉用の光源は全てレーザーであった。私たちは金属チタンのナノ構造が大きな光電場増強能を持つ発見し、新たな革新に成功した。すなわち、レーザーではなく、水銀ランプの光で、それも従来よりも100万分の一弱い光強度で、20 nm サイズのナノ粒子の捕捉に成功した(サイズ20 nm 以下のナノ物質を捕捉・操作の実現)。私たちの光強度は、太陽の光を虫眼鏡で集めたそれに近く、天然のインコヒーレント光で光捕捉できる可能性を示したので、顕微鏡やレーザーという制約を一気に取り去った全く新しい光捕捉法への道を示した意義は大きい。 S. Hashimoto et al. & Y. Tsuboi, ACS Appl. Mater. Interfaces, Vol. 13, No. 23 (2021), 27586-27593. ・光マニピュレータによる量子状態制御 ブラックシリコン光マニピュレータにより、蛍光性ポリマーを捕捉できた(ナノ物質の祖捕捉と操作)。そして、その蛍光の色をレーザー光の強度だけで青,緑,黄緑,黄色,オレンジ色に完全リモートかつ可逆的に自在にコントロールできる方法を開発した。本技術は可視域だけでなく、紫外域や近赤外域における発光色の制御にも適用できる。マイクロカプセルの中にナノ構造シリコンとペリレン修飾ポリマー水溶液を封入すれば、波長可変型の、マイクロ光源となりえる。これは、マイクロマシンの部品や細胞内バイオイメージングへの応用などが考えらる。 R. Takao et al. & Y. Tsuboi, Angew. Chem. Int. Ed., Vol. 61 (2022), e202117227.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目標を完全に達成した。 1)油水界面光マニピュレーション法: バルク液中では捕捉できないチタニアのナノ粒子やナノダイヤモンドを油水界面で捕捉できた。さらに、これを光触媒反応にまで応用で来た。この応用は当初の目標を超える。 "Optical Trapping of Nanocrystals at Oil/Water Interfaces: Implications for Photocatalysis" Yasuyuki Tsuboi et al., ACS Appl. Nano Mater., Vol. 4 (2021), 11743-11752. 2)インコヒーレント光ピンセットの開発: 既述の通りである。チタンナノ構造をフル活用し、世界で初めて「レーザーを使わない光ピンセットの開発」が出来た。当初の予想を超える成果である。 3)蛍光カラーのフルカラー制御: 既述のとおりである。シリコンナノ構造をフルに活用し、鮮やかな光化学応が出来た。当初の予想を超える成果である。
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