研究課題/領域番号 |
20H02552
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
川脇 徳久 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 講師 (60793792)
|
研究分担者 |
飯田 健二 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (20726567)
佐藤 良太 京都大学, 化学研究所, 助教 (80629890)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 金属クラスター |
研究実績の概要 |
金や銀において、超原子として扱える、金属ナノクラスター(NC)がこれまでに多数報告されている。なかでも、正20面体貴金属13原子ナノクラスターは、頂点の共有によって超原子分子と見なせる連結構造を形成することができる。しかし、銀(Ag)を基本元素として形成された超原子分子の報告はほとんどない。そこで、どのような超原子分子を合成できるかを明らかにするために、金属13原子からなる20面体のNCが2つつながった[Ag23Pd2(PPh3)10Cl7]0(Pd=パラジウム、PPh3=トリフェニルホスフィン、Cl=塩素)を合成し、幾何構造と電子構造を明らかにした。その結果、[Ag23Pd2(PPh3)10Cl7]0が合成可能な超原子分子であることを明らかにした。単結晶X線回折分析により、[Ag23Pd2(PPh3)10Cl7]0の正20面体構造内及び構造間の金属間距離は、既報の[Ag23Pt2(PPh3)10Cl7]0よりわずかに短く、金属-PPh3距離はわずかに長くなっていることが示された。いくつかの実験と密度汎関数計算に基づいて、[Ag23Pd2(PPh3)10Cl7]0と既報の[Ag23Pt2(PPh3)10Cl7]0は超原子の骨格(金属コア)が強いため[Ag25(PPh3)10Cl7]2+より安定していると結論づけた。これらの知見は、新しい超原子分子の創製に向けた明確な設計指針につながると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正20面体Ag13原子ナノクラスターが頂点共有した連結構造体において、パラジウムや白金が2つ置換した[Ag23Pd2(PPh3)10Cl7]0や[Ag23Pt2(PPh3)10Cl7]0は、超原子の骨格が強いことで、合成し得る合金クラスターであることが明らかとなった。これは、金属クラスターに第二異種金属をドープすることで、金属クラスターの安定性を向上できることを示しており、第三異種金属の高濃度ドープにも大きな影響を与えると推察される。この結果は、合金化により新たな電子構造を創出する上で明確な設計指針になると期待され、金属クラスターに対して、高濃度の異元素ドープも可能になると予想される。
|
今後の研究の推進方策 |
Agをベースにした金属クラスターにおける、異種金属ドープが与える影響について、さらに検討を進める。 また、8-10属元素を主たる構成成分とした合金クラスターの合成を試みる。配位子は、dブロック金属との結合性が強いpブロック元素を用いて、金属種との結合 部位とする。比較的嵩高い配位子を用いた、液相中における金属塩還元法によって合金クラスターを合成し、その核種・サイズ・構造を制御し、UV-Vis, MALDIMS, ESI-MS, DPV, SC-XRD, TGAを用いて、合成した金属クラスターの基礎特性を評価する。場合によって、理論計算や触媒活性評価によって、金属クラスターの 幾何・電子構造とその物性の相関を明らかにする。
|