研究課題
原子層磁性体に関する研究が近年急進展している。2次元磁性体は対称性が低いため、バルクには現れない特異な現象が期待できる。特に磁気転移温度近傍の磁気ゆらぎは、バルク磁性体に比べて強いことが知られている。そこで本研究課題では、2次元の強磁性体、三角格子反強磁性体、近藤格子系など、様々な磁気特性をもつ2次元磁性体に、スピン角運動量の流れ「スピン流」を注入することで、磁気転移温度近傍の磁気ゆらぎを、スピン流-電流変換(スピン変換)を介して電気的に検出する。さらにバルクの磁化測定やμSR測定などと比較することで、スピン変換で得られる物理量を解明する。最終的には、磁気ゆらぎを利用した高効率なスピン変換の手法を開拓し、スピン流物理とその応用に新展開をもたらす。最終年度は、原子層強磁性体を用いた高効率スピン変換手法の開拓のため、Fe5GeTe2と強磁性体パーマロイ(Py; Ni81Fe19)の2層構造を作製し、Pyの強磁性共鳴を利用して、Fe5GeTe2層におけるスピン流生成効率を測定した。その結果、Fe5GeTe2の磁気転移温度(~300 K)以上では、約-10%だったスピン流生成効率が、磁気転移温度以下で符号を変え、+20%に増大するが分かった。この値は、通常の金属強磁性体(数%)と比べると、一桁近く大きくなものとなっている。またギルバートダンピングに着目すると、Fe5GeTe2の強磁性転移温度付近で最大の0.02となっており、このことがスピン流生成効率の符号反転に大きく関わっていると考えられるが、詳細なメカニズムについては現時点では不明であり、今後も継続して調べていく予定である。なお本研究は、理化学研究所の近藤浩太上級研究員と大谷義近グループリーダーとの共同研究によるものである。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Physical Review Letters
巻: 129 ページ: 046801/1-6
10.1103/PhysRevLett.129.046801
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 61 ページ: 060908/1-5
10.35848/1347-4065/ac6a37