研究課題/領域番号 |
20H02561
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 秀司 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (70613991)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 回路量子電磁気学 / 超伝導共振器 / 磁性体 / 回転運動 / 2準位系 |
研究実績の概要 |
物質と光の相互作用に関わる研究は、物理学の基本的なテーマの一つであり原子と光子を用いた量子電磁気学から、回路上に実装された人工原子と共振器中の光子を用いた回路量子電磁気学へと進展してきた。本研究では、強磁性体中に現れる幾何学的磁気構造による人工原子の実現を通して、従来の回路量子電磁気学では未開拓だった空間的に非一様な磁気構造とマイクロ波光子の織りなす新しい物理の検出と解明に取り組んでいる。具体的には「マイクロ波光子による磁気渦回転運動の量子力学的制御と検出」を目指す。本年度は以下の成果をあげた。(1) 格子欠陥集団による非線形超伝導共振器の実現。 (2) スプリットリング共振器の実現と強磁性絶縁体中マグノンとの超強結合の実現(1)に関しては、回路量子電磁気学の実験で用いられる超伝導共振器に関わる研究である。厚みが2マイクロメートル程度の酸素欠陥を持つ熱酸化膜上に超伝導共振器を作製することで、マイクロ波による二準位系の飽和現象を利用した非線形超伝導共振器の作製に成功した。またこの非線形超伝導共振器を利用したパラメトリック発振を確認した。(2)に関しては、テフロン基板上にスプリットリング共振器を作製し、共振器中光子とYIGの単結晶中のマグノンがコヒーレントに結合した量子状態を実現した。この時の結合強度は共振器及びマグノンの固有周波数の13パーセント程度の大きさを持った超強結合領域であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で目指す「マイクロ波光子による磁気渦回転運動の量子力学的制御と検出」においては (1)超伝導共振器の作製と評価(2)磁性円盤の作製と回転運動の検出(3)超伝導共振器中磁性円盤の測定と評価(4)磁性円盤の回転運動と超伝導共振器のコヒーレントな結合の実現という順で研究を進めている。現状(3)の段階にあり、超伝導共振器中で磁性円盤の回転運動を検出するべく研究を進めている。さらにこれらに加えて、当初予定していなかった酸化膜中欠陥準位集団による超伝導共振器への非線形性誘起などの成果も出ており、概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後進める「超伝導共振器中磁性円盤の測定と評価」「磁性円盤の回転運動と超伝導共振器のコヒーレントな結合の実現」に向けて、超伝導量子干渉素子を持った超伝導共振器の作製、及び前記素子による 磁性円盤の回転運動の検出を目指し研究を進めていく。
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