研究課題/領域番号 |
20H02562
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研究機関 | 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所 |
研究代表者 |
高瀬 恵子 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 量子科学イノベーション研究部, 主任研究員 (60553245)
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研究分担者 |
内海 裕洋 三重大学, 工学研究科, 准教授 (10415094)
舘野 功太 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, 多元マテリアル創造科学研究部, 主任研究員 (20393796)
佐々木 智 日本電信電話株式会社NTT物性科学基礎研究所, フロンティア機能物性研究部, 主任研究員 (80393768)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スピン軌道相互作用 / ナノワイヤ / 電界効果トランジスタ |
研究実績の概要 |
2021年度は、昨年度に引き続きIII-V属半導体ナノワイヤを用いたスピン軌道相互作用の電気的制御に関する新奇素子開発および制御効率向上に取り組んだ。とくに、高周波領域でも透過性のある導電性酸化物であるZnOを金属ゲート電極の代わりに用いるゲート・オール・アラウンド型の電界効果トランジスタ(FET)の構造をインジウムヒ素(InAs)ナノワイヤに適用した2020年度の結果をふまえ、2021年度は新たにInAs/InPコアシェルナノワイヤを用いて新奇素子開発に取り組んだ。その結果、InAsナノワイヤを用いたときよりも大きなスピン軌道相互作用の電気的制御を達成する結果を得た。これは、従来よりも巨大なスピン軌道相互作用の電気的制御が可能となったことを意味しており、将来的なナノスケール・スピンFETの実現に貢献する要素技術として非常に重要な結果となる。そのメカニズムを解明するために、TEM分析などの構造分析手法による実験をすすめつつ、バンド計算を専門とする理論家と議論を開始している。また、測定系の整備については、2021年度は高周波測定系に新たに外部磁場を導入するシステムを構築した。 さらに、昨年度に引き続きナノワイヤ/超伝導複合型素子についても研究を進め、コトンネリングピークの大きさが偶奇で異なる結果について解析を進めている。 また、III-V属半導体ナノワイヤにおいて得られた知見をふまえ、スピン軌道相互作用の効果やナノ構造効果を別の系に対しても調べている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画にもとづき、高周波領域でも透過性のある導電性酸化物であるZnOを用いたナノワイヤFETの開発をすすめ、これまで利用されていた材料であるInAsナノワイヤのかわりに、新たにInPシェルのin-situ成長を利用したInAs/InPコアシェルナノワイヤを用いることで、さらにスピン軌道相互作用を高効率にゲート制御することに成功した。また、高周波測定系の整備も引き続き進めており、2021年度はあらたに外部磁場を導入するシステムを構築し測定系開発を進めることができた。 ナノワイヤ/超伝導の複合素子についても引き続き研究を進め、コトンネリングピークの大きさが偶奇で異なる結果についても議論を始めている。 上述した研究進捗にもとづき各研究成果を外部発表することができたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は得られた研究成果をふまえつつ、次のように研究を推進していく。 まず、InAs/InPコアシェルナノワイヤについて得られた巨大なスピン軌道相互作用の結果について背後のメカニズムを解明するために理論家と共同研究を開始し、半導体ナノワイヤの物理自由度に着目した新たなバンド計算を行い、実験結果と比較する。さらに、TEM分析などの構造分析結果からも、これまで得られた実験結果についてフィードバックできる知見を得ることを目的として実験を進める。それらの結果の論文化を行う予定である。また、ナノワイヤ/超伝導複合素子についても論文化を行う。 さらに、これまで研究してきた半導体ナノワイヤや、得られた結果をふまえて研究を開始している別の系に対しても知見を得るために高周波測定を引き続き進め、必要に応じて測定システムの機能向上を行っていく。
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