研究課題/領域番号 |
20H02567
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
梅山 有和 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (30378806)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 原子層材料 / アンチモネン / マレイミド / フラーレン / 共有結合修飾 / 二硫化モリブデン / ピレン / エキシプレックス |
研究実績の概要 |
本研究の狙いは、1)光機能性分子の半導体原子層材料への化学修飾、2)光機能化半導体原子層材料の光ダイナミクスの解明、3)光機能化半導体原子層材料の光エネルギー変換系への応用、である。2021年度は、(i) マレイミド誘導体のアンチモネンへの共有結合修飾、(ii) フラーレンのアンチモネンへの共有結合修飾、(iii) ピレン修飾MoS2の光物性解明、を対象として、1)および2)に取り組んだ。 (i) ボールミル装置を用いて、バルクアンチモンの剥離を行なったところ、数層にまで剥離したアンチモンが得られた。これを、few-layered antimonene (FLSb)と名付けた。さらに、得られたFLSbに対し、N-ベンジルマレイミドの共有結合修飾を、遊星型ボールミル装置を用いた固相反応により行なった。熱重量測定から、得られたBn-mal-FLSbは、28wt%のマレイミド誘導体を含むと見積もられた。これは、アンチモネンの共有結合修飾に成功した初めての例である。 (ii) ボールミル装置を用いて、FLSbとC60の固相反応を行うことにより、共有結合複合体であるFLSb-C60を得ることに成功した。元素分析測定から、FLSb-C60の炭素の割合は12wt%であり、43個のアンチモン原子に対して1つのC60が連結していることがわかった。 (iii) ピレン修飾MoS2の過渡吸収スペクトル測定を行ったところ、900 nmに極大を有する過渡種が観察された。酸化還元状態での吸収スペクトルを考慮すると、この過渡種はエクシプレックス状態であることが考えられる。また、この過渡種の寿命は2.5 ns程度であり、発光の寿命ともよく一致していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的の一つであった、アンチモネンの共有結合修飾を、マレイミド誘導体あるいはフラーレンを用いることにより達成した。ここで、ボールミルを用いた固相反応を行ったことがブレイクスルーとなった。また、過渡吸収スペクトル測定や蛍光寿命測定を行うことで、ピレン修飾MoS2の光ダイナミクスの詳細な解明を、当初の予定通り遂行することができた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、ボールミルを用いたアンチモネンのマレイミド誘導体による共有結合修飾を活用し、アンチモネンにピレンやポルフィリンなどの光機能性分子を連結し、その光物性の詳細な解明を試みる。また、2021年度に得られたFLSb-C60とあわせて、得られた光機能化アンチモネンを光触媒や有機薄膜太陽電池に応用する。さらに、ボールミルによる共有結合修飾法を、二硫化タングステンなどの他の原子層材料にも適用し、新たな複合材料群を開発する。
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