研究課題/領域番号 |
20H02571
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研究機関 | 沖縄工業高等専門学校 |
研究代表者 |
伊原 博隆 沖縄工業高等専門学校, その他部局等, 校長 (10151648)
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研究分担者 |
永岡 昭二 熊本県産業技術センター(ものづくり室、材料・地域資源室、食品加工室), その他部局等, 研究主幹 (10227994)
高藤 誠 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (50332086)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 円偏光発光 / 二次キラリティ / 自己組織化 / グルタミド / 光学フィルム |
研究実績の概要 |
本研究は、LEDや太陽電池、ディスプレイ、光学レンズ等、様々な分野で普遍的に必要とされる機能性透明材料の開発を目的とするものであり、無機ガラスに替わる、軽く柔軟かつ高次機能が付与された新しい有機材料の開発を目指している。この普遍的な課題に応える新戦略として、ポリマー中で発光性低分子がキラルに配列して一次元的にナノ成長(1D成長)する現象を利用し、次世代光源の一つとして期待されている円偏光発光を産み出すオール有機透明ポリマー材(3D網状化構造体)の開発に主眼を置いた。 本年度は、溶液中およびポリマー中で1D成長および3Dナノ網状化構造化を示しうる分子材料として、官能基をターピリジンとする新たなグルタミド脂質を合成した。同脂質が、溶液中でナノサイズの直径を有する繊維状会合構造(1D化)を示すこと、高濃度領域でゲル化(3D化)することを確認した。また、ターピリジル官能基が外部イオン(金属イオン)の種類に応答して、会合構造の変化や光学特性の変化(円二色性、円偏光発光特性等)を示すことを確認した。 ポリマー中での3D化については、官能基にカルボキシル基を有するグルタミド脂質を活用し、カチオン系色素と組み合わせたバイナリシステムとしてポリマー中にブレンドし、薄膜シートを作製して光学特性を調査したところ、1Dナノ繊維の網状化による高い透明性と、グルタミド成分の配向性に由来する誘起円二色性や誘起円偏光発光特性を引き出すことが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究目的を遂行するために、当初計画にはなかった配位特性を有する新たな分子材料の設計・合成し、求める基本性能(1D会合特性、3D網状化、誘起キラリティ)を確認することができた。また、期待通りに、配位特性を利用した会合形態の変化や光学特性に対する応答性も確認できたが、円偏光度については、期待した高い数値を得ることはできなかった。 一方、すでに開発済みのカルボキシル基を官能基とするグルタミド脂質系では、期待通り、溶液中に加えてポリマー中でも1D会合特性や3D網状化、誘起キラリティ特性が得られ、また高い円偏光発光特性を得ることができたので、総合的に評価して、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、コロナ禍により、当初目的としていたボルドー大(仏)での精密なキラル構造の評価や円偏光発光度の測定ができなかったため、国内連携研究(熊本大学、熊本県産業技術センター、京都大学等)を促進して、同研究目標に向けて加速したい。 また、1D配向集積の要となるグルタミド脂質のバリエーションを強化し、より多彩な円偏光発光システムの開発を目指すため、新たに国内連携(お茶の水大、東邦大学等)を強化して研究を遂行する。
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