研究実績の概要 |
単層カーボンナノチューブ(SWCNT)や二硫化タングステンナノチューブ(WS2-NT)といったカイラル構造を有するナノチューブ物質群においては、キラリティ性をもつカイラル構造を反映して、非相反伝導・特殊な円偏光応答・バルク光電変換といった、特異な物性が見出されることが期待される。本研究では、SWCNTでは、エナンチオマー分離し、ある片方のカイラル構造を持つ鏡像異性体を多く含んだSWCNT試料を精製し、それが一方向に配列した配列薄膜を創出し、そのキラリティ性を反映した新奇物性の探索をバルク薄膜で行う。また、WS2-NTに代表される遷移金属カルコゲナイドナノチューブ(TMDC-NT)においては、そのカイラル構造と物性との関係を明らかにする為に、合成・精製技術開発を更に発展させ、ナノチューブ物質群におけるキラリティと物性との関係を実験的に解き明かす。2023年度は、コロナの社会情勢の中、研究活動が制限される中、以下の研究を進めた。【カイラル構造と円二色性】キャリア注入時における円二色性を評価する測定技術を確立し、キャリア注入によって生じるCNT上におけるトリオン吸収帯における円二色性を世界で初めて明らかにした。また、(6,5)および(11,-5)試料における発光において発光円二色性が見いだされることを突き止め、更に、電流注入円二色性発光も可能である知見を得た。近赤外領域における円二色性発光を見出している【試料作製技術開発】小直径WS2-NTの合成を進め、化学気相法による基板成長単結晶WO3ナノワイヤーからの小直径WS2-NT(直径は10nm程)の合成に成功し、その発光の直径依存性を見出す実験結果を得た。
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