研究課題/領域番号 |
20H02582
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
高橋 康史 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (90624841)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ライブセルイメージング / FRETバイオセンサー / SICM / 局所刺激 |
研究実績の概要 |
電子顕微鏡と蛍光顕微鏡の隙間を埋める技術として、超解像度顕微鏡などバイオイメージングの新たな可能性が示されている。その一方で、メンブレントラフィック、細胞遊走などのダイナミックな動き(形状変化)は、細胞内シグナル伝達により調整されている。シグナル伝達の起源となる受容体の刺激に関する感受性、刺激の強度や周期、表面形状変化との関係など、複雑な細胞機能のシームレスな理解には、ナノスケールの表面構造変化とシグナル伝達の関係をリンクさせる必要がある。 ナノピペットを用いて、生細胞の表面形状変化を可視化できる走査型イオンコンダクタンス顕微鏡(SICM)は、イメージングだけでなく、細胞への局所的な化学物質の投与や、細胞質を回収可能である。これまで、共焦点顕微鏡と併用し、エンドサイトーシスに関与する生体分子の動きとエンドサイトーシスピットの消失をナノスケールで捉えた。このような細胞骨格と、細胞表面形状の変化の相関性が評価されてきた。しかし、従来法ではシグナル伝達との関係を評価できない。 そこで、本研究では、シグナル伝達を可視化するためFRETバイオセンサーを導入し、ナノスケールの形状測定とともに、ナノピペットから任意の位置に化学物質を投与可能なSICMと組み合わせて使用することで、局所的な刺激の印可と、シグナル伝達の可視化、さらに、そのシグナルにより生じる細胞のナノスケールの形状変化を捉える。具体的な応用として、神経細胞のカーゴ輸送、免疫シナプスの形成、一次繊毛の伸縮など局所刺激に伴うナノスケールの構造変化とシグナル伝達の関係を明らかとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FRETとSICMの同時計測が可能なシステムの開発が順調に進んでいる。SCMOSで取得するのFRET画像を計測中に解析可能なプログラムが完成し、また、SCMOSカメラを搭載した倒立顕微鏡上でのSICMの計測にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
上皮成長因子を上皮細胞にSICMのナノピペットから添加した際に生じる細胞のシグナル伝達の可視化を進めている。京都大学の松田道行先生からRaichuのFRETバイオセンサーの提供を受けて計測を進めている。このRaichuにより、葉状仮足や市場仮足の形成と密接に関係のあるRac1やCdc42の活性を捉え、その際に生じる構造変化をSICMにより捉える。
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