研究課題/領域番号 |
20H02587
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
五十嵐 龍治 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, グループリーダー (90649047)
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研究分担者 |
鈴木 芳代 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員 (10507437)
加田 渉 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (60589117)
神長 輝一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 研究員 (90825176)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノ量子センサー / ナノダイヤモンド / NVセンター / ナノセンサー / 蛍光イメージング / 定量生物学 |
研究実績の概要 |
細胞小器官標的を効率化するナノ化学技術の開発として、2021年度はナノダイヤモンドセンサーによる分子標的技術の開発を実施した。特にナノダイヤモンド表面のポリグリセロール化による生体分子の非特異吸着排除の条件を検討し、30nm、50nm、100nm、200nmといった多様な粒子径のナノダイヤモンドにより分子選択的標識の実施が可能な体制が整った。 温度・pH計測を高速化・高精度化する計測技術・材料開発としては、2021年度は前年度に高速化したT1イメージング技術および温度計測技術を広視野範囲のナノ計測に適用し、最大1000細胞程度の細胞パラメータを同時計測可能となった。また、蛍光ナノダイヤモンドの輝度とコントラストを改善することで物理化学パラメータの計測精度も大幅に向上した。更に温度と粘性、温度とpH、温度とラジカルといった2パラメータの同時計測について設計を行い、温度と粘性の同時計測については生体試料に対する適用も行った。更に、機械学習を用いた計測パラメータの自動最適化技術を開発し(Fujiwaku et al., 2021)、これにより励起光やマイクロ波強度の最適化を従来は実験者の経験に依らずシステマティックに行うことが可能となった。 生細胞内の温度およびpHの時空間マッピングの実施においては、2021年度は培養細胞、生物個体、ex vivoの臓器など様々な生体試料に対して適用した。特に、生物個体については当初予定していた線虫だけではなく、マウスなどの哺乳動物にも適用し、様々な生命科学実験系に対してODMR計測を行う体制が整った(Yanagi et al., 2021; Kaminaga et al., 2021)。また、それらの結果を老化や病態と紐付けすることで、細胞や生体の状態を物理・化学パラメータと結びつけて議論するための技術基盤の構築を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画に加えて、派生技術として、ナノダイヤモンドセンサーを用いて生体由来の微量分子の検出が可能な技術の開発に成功した(Yanagi et al., 2021)。これにより、本計画の提案時に予定していた細胞内パラメータの時空間マッピングに対して細胞内代謝産物等を紐付ける上でも、ナノダイヤモンドセンサーが極めて有用であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
細胞小器官標的を効率化するナノ化学技術の開発としては、2021年度に開発したナノダイヤモンドセンサーによる分子標的技術や細胞導入技術などを用いることで、細胞の株間の差異、老化状態の差異、分化状態の差異などを細胞内の物理化学パラメータ(特に温度やpH、ラジカル濃度等)と定量的に結びつけるデモンストレーション実験を実施する。 特に培養細胞中においては、この際に細胞外(培地中)に放出される様々な活性化因子やサイトカイン、細胞外小胞等の高感度計測も対照指標とすることで、細胞内物理化学パラメータの差異や変化に基づく細胞生物学を実現するための実験方法論の構築に着手する。 また、培養細胞系での実験と同時に、組織レベルから生物個体までに渡る本技術の幅広い適用も推進する。具体的には、当初計画していた線虫の実験系においては、刺激に対する走性などと紐付けた実験も系の考案にも着手する。更に、当初計画では想定していなかった小動物個体内での様々な計測技術についても、本研究を推進する課程で実現していることから、小動物個体の病態と細胞内パラメータとを紐付けた解析も推進する。
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