研究実績の概要 |
細胞内での物理化学パラメータマッピングに供する技術として、分子サイズのナノダイヤモンドを用いた極小量子センサーの開発を推進し、これを用いた高感度量子センシングおよび超解像イメージング技術の開発に成功した(Pinotsi et al., Nanoscale Advances, 2023 5(5), 1345-1355)。また、温度計測精度およびpH計測精度の向上のための装置改良なども行い(Segawa et al., Progress in Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy, 2022)、物理化学パラメータの多項目計測が実施可能となった。 細胞小器官標的を効率化するナノ化学技術の開発としては、2021年度に開発したナノダイヤモンドセンサーによる分子標的技術や細胞導入技術などを用いることで、細胞間の差異を細胞内温度等の物理化学パラメータによって定量的に区別するデモンストレーション実験を実施した。その結果、培養細胞において細胞状態に依存的な温度変化を観測することに成功した。 また細胞外に放出される微量の生体活性物質を指標とする細胞および生物個体の状態決定の技術を開発することで、細胞内物理化学パラメータの差異や変化に基づく細胞生物学を実現するための基盤技術を確立した。 更に、培養細胞系や動物個体の体液だけではなく、動物個体内においてもナノダイヤモンドセンサーの適用を推進し、実験組織レベルから生物個体までに渡る本技術の幅広い適用を実施した。その結果、当初計画していた線虫の実験系ににととまらず、マウスやラットなどの小動物個体内での物理化学パラメータの計測を行い、小動物個体内における細胞内物理化学パラメータとの病態との相関解析にも成功した。
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