本年度(2022年度)は、前年度(2021年度)の「DNA/PEG化金ナノ粒子の界面構造の影響とDNAウォーキングの評価」および「緩衝溶液中からの標的核酸の検出」を踏まえて、前年度(2021年度)に引き続き「緩衝溶液中からの標的核酸の検出」および「リアルサンプルからの標的核酸の検出」の検討を行った。具体的には、これまで調製した蛍光ラベル化DNAの固定化本数(H:344 本/粒子、M:231 本/粒子、L:141 本/粒子)が異なるDNA/PEG化金ナノ粒子を用いて、DNAウォーキング機構を介した標的核酸の検出を行った。緩衝溶液中からの標的核酸の検出は、種々の濃度の標的核酸をDNA/PEG化金ナノ粒子に添加し、緩衝溶液中で時間に対する蛍光強度の変化を現有装置である蛍光分光光度計により測定することにより行った。すなわち、DNA/PEG化金ナノ粒子上で標的核酸のDNAウォーキングが進行すると、時間に対して蛍光強度も増加することになる。実際に標的核酸の濃度が高いほど、蛍光強度の増加速度は速くなり、標的核酸の濃度と蛍光強度の増加速度は比例関係があることが明らかとなった。これらのことから、DNA/PEG化金ナノ粒子を用いて、緩衝溶液中からの標的核酸を検出・定量することが可能であることが明らかとなった。一方、検出感度は、DNA/PEG化金ナノ粒子のDNAの固定化本数に比例せず、最適な固定化本数(M:231 本/粒子)が存在することが明らかとなった。次に、この最適な固定化本数(M:231 本/粒子)を有するDNA/PEG化金ナノ粒子を用いて、種々の濃度の標的核酸を血清(10 %)に加え、疑似リアルサンプルからの標的核酸の検出を検討した。その結果、本検出システムは、血清(10 %)の影響を受けず、緩衝溶液中と同様に標的核酸を検出できることを予備的に確認できた。
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