研究課題
臓器や細胞の複雑な構造や機能の再構成は、生物学・医学のみならず、創薬や再生医療に向けても近年その重要性を増している。だが、従来の研究はデバイス中に2次元的に細胞を並べるだけで、その機能を再現しているとは言い難かった。本研究では心臓を例にとり、心筋細胞がどのようにブリッジや中空の構造を形成しているかも力学的機序を明らかにして微細デバイス内に立体的に配置・制御し、その収縮力によるポンプ機能と自己還流機能を備え、薬剤試験や再生医療に応用しうるオンチップ心臓を作ることを目指す。当該年度は、オンチップ心臓デバイスを作製するための基盤技術を確立した。すなわち、このような複雑な細胞デバイスを作製するにあたり、通常のチップデバイスのように、流路を先に形成して後から細胞を送り込むような手法では、作製できる構造に相当制限がある。そこで、先にオープンな環境下でガラス基板に細胞を接着させ、その後に、常温においてガラスで蓋をし、細胞を閉じ込める技術を開発した。具体的には、細胞を接着させる溝部分以外の部分を中性洗剤で洗浄し、いったん乾燥させ、水をつけて長時間加圧することで貼り合わせさせることに成功した。2~3時間程度の加圧であっても、耐圧は、0.6 MPa以上と、通常の細胞培養実験には十分な値を示し、漏れなくデバイスが使えることがわかった。本技術を用いれば、流路内にて3次元的なパターニングも可能となり、デバイスの可能性が一気に高まる。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は、デバイス作製の基盤となる細胞を接着させてからの流路形成・デバイス化の技術確立を達成し、その性能も十分であったことから、当初の目標通りの進展がみられたといえる。
今後は、具体的なデバイス作製実験へと移行する。まずは細胞を閉じ込めた空間内での細胞の動きのセンシングや把握、アクチュエーション機能の性能評価といった基本的な項目について検証実験を行う。また、デバイス外での性能と比較検証を行い、流路に閉じ込めた場合と違いが出るか、といったことについても検証する。また、これまでの主な研究成果を学術誌論文にまとめ、発表する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 備考 (1件)
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