研究実績の概要 |
臓器や細胞の複雑な構造や機能の再構成は、生物学・医学のみならず、創薬や再生医療に向けても近年その重要性を増している。だが、従来の研究はデバイス中に2次元的に細胞を並べるだけで、その機能を再現しているとは言い難かった。本研究では心臓を例にとり、心筋細胞がどのようにブリッジや中空の構造を形成しているかも力学的機序を明らかにして微細デバイス内に立体的に配置・制御し、その収縮力によるポンプ機能と自己還流機能を備え、薬剤試験や再生医療に応用しうるオンチップ心臓を作ることを目指す。 当該年度は、心筋細胞ポンプが実際に医学や医療に応用できることを示すため、iPS細胞を用いて作製した心筋細胞シートを用いて、これが薬剤に応答して挙動が変わることを示し、その有用性を明らかにした。具体的には、以前に開発した心筋シート駆動型ポンプ(Lab Chip, 6 (3), 362-368 (2006))を改良して細胞接着性を向上させたデバイスを用いて、iPS細胞を心筋細胞に分化させて温度応答性培養皿から剥離したデバイスを装着し、数日後に拍動が速くなる、および遅くなる薬剤を加え、微粒子により可視化した微小流路内の流体を観察することで拍動数や拍動の強さを計測した。薬剤の濃度に対してリニアな応答が見られ、薬剤探索に用いられることが実証された。さらに、その感度は通常の心筋シートの力計測系に比べて2桁程度向上し、非常に微小な変化も感知できるような高度なデバイスを作製することができた。
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