研究課題/領域番号 |
20H02601
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
馬場 暁 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80452077)
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研究分担者 |
城内 紗千子 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20870760)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 表面プラズモン / 有機太陽電池 / センサ |
研究実績の概要 |
本研究では、局在プラズモン・伝搬プラズモン・量子効果が協働する著しい光電場増強現象が得られるプラズモニック構造を創出し、理論的にメカニズムを解明した上で高効率・高感度な新規有機光・電子デバイスの提案を行うことを目的としている。 この目的に対して、今年度は局在表面プラズモン励起による増感効果を利用した、非フラーレン型有機薄膜太陽電池の作製と評価を行った。非フラーレンアクセプタを用いたPM:Y6有機太陽電池では光吸収が近赤外域まであるため、近赤外域での光吸収をさらに増強するため、局在プラズモン励起が近赤外いきにある金ナノロッドを使用した。この結果、可視域のみに局在プラズモン励起が起こる金微粒子を用いた場合に比べて、有機太陽電池の効率の向上が観測された。さらに、伝搬型表面プラズモンが近赤外域に励起するナノ金属構造の作製も行い、有機太陽電池への応用について検討を行った。 また、液滴限定法を用いて作製したNOA61フォトポリマー半円球小型プリズムの底面にグレーティング構造を形成することで、プリズムカップリング表面プラズモンとグレーティングカップリング表面プラズモンの同時励起を行うことを可能とした。この2種類の伝搬型表面プラズモンの同時励起による光電場増強システムを用いたバイオセンサを構築し、ナノメートルオーダーの薄膜の堆積、IgG抗体の検出を行った。その結果、通常のプリズムを用いた表面プラズモンバイオセンサの感度とほぼ同等の感度を有したセンシングシステムの小型化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の今年度の研究計画である、プラズモニックナノ構造の有機太陽電池への応用について、近年進歩してきている非フラーレン系有機太陽電池を用いて検討を行った。ナノ構造を基にしたデバイス設計を行い、上記のように実験を進め、非フラーレン系有機太陽電池におけるデバイスの高効率化に成功した。また、限定液滴法を用いてNOA61小型グレーティング構造プリズムを作製して、簡便・小型のデュアルモード表面プラウズモン共鳴センサチップの作製を行った。その結果、可視域から近赤外域にかけて、Au/空気界面に起因するプリズムカップリング表面プラズモンとグレーティングカップリング表面プラズモン2種類の共鳴励起を同時に行うことができることが確認された。 以上のように、有機太陽電池への応用、センサ応用についての計画を実施してそれぞれ成果が得られており、概ね当初の計画通り達成できた。これらの結果は、すでに学会での発表を行っており、論文投稿の準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、これまでに得られた研究をさらに進め、金ナノロッドと金属ナノ構造に金量子ドットも加えた、非フラーレン系有機太陽電池の検討を行い、更なる高効率化を図る。金量子ドットによるエネルギー移動効果や、紫外光から可視光への変換による有機層の可視光吸収フォトキャリア増加、プラズモン光電場変化など、波長毎の光電変換構造や室内光下での最適化を行い高効率デバイスの開発に結び付ける。また、プラズモニックナノ構造による著しい光電場エネルギー増強現象に起因した、金属/有機層界面での光熱発生とフォトキャリア増加による光電変換特性向上、双方の効果を利用したプラズモニック有機光電・熱電変換複合デバイスの創出を行う。有機太陽電池で主に可視域の光により光電変換を行い、有機太陽電池の光電変換層で吸収されずに透過する近赤外域光をプラズモニック電極に熱電デバイスを貼り合わせることで、発生する光熱を熱電変換にも利用する。有機太陽電池には、比較のため可視域のみに光吸収をもつ光電変換ポリマーや、近赤外域に光吸収をもつ狭バンドポリマーも用いて検討を行う。 また、得られた成果は国内・国外の学会で報告を行うことにより公表し、国際論文誌での誌上発表も積極的に行う。
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