研究課題/領域番号 |
20H02605
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮内 雄平 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (10451791)
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研究分担者 |
宮田 耕充 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (80547555)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 赤外光起電力 / ワイル半金属 |
研究実績の概要 |
本研究では、カルコゲナイド系層状ワイル半金属の赤外光学応答を明らかにし、非従来型の高効率赤外光電変換学理と最適な試料・素子構造を見出すことを目的として研究を行った。具体的な研究項目としては、(A) 光電変換特性の偏光・温度・光波長・励起位置・膜厚依存性の解明、(B)光起電力生成の超高速応答の解明、(C) 高効率赤外光電変換のための大面積・高品質試料・最適素子構造作製技術の開拓、の3項目を計画しているが、2020年度は主として(A)および(C)の研究を進めた。代表者グループにおいては、まず、測定のために合成した結晶試料(昇華再結晶法により合成)のX線構造解析により、狙いどおりの組成を持つ化合物結晶が合成できていることを確認した。また、結晶成長の条件の改善を進め、TaIrTe4試料については、結晶の剥離によりこれまでよりも大面積の、より光起電力測定に適した薄片試料が得られるようになった。さらに試料上に微細電極を形成することで、電流計測が可能なデバイスを試作した。赤外光電流計測に向けて、赤外光源(中赤外量子カスケードレーザー)を導入した。また、波長可変測定に向けて、現有設備の赤外波長可変レーザーの出力波長を正確にモニターするための実験スキームを整備したほか、赤外光検出光学系の整備など、必要な一連の測定システムの整備を進めた。分担者グループにおいては、化学気相成長法による大面積・高品質なカルコゲナイド系試料作製技術についての研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大に伴う活動制限の影響により一定程度の遅れはあるものの、測定のための高品質な試料の準備と電流計測のためのデバイスの試作まで進めることができ、導入時期が遅れたものの、導入予定の光源(中赤外量子カスケードレーザー)も無事に導入できたことから、概ね順調に進展している、とした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ワイル半金属の赤外光電変換物性計測を中心に研究を進める。現時点での課題として、試料物質をチャネルとする光電流計測用デバイスを作製することはできたが、電流測定系のノイズが予想以上に大きく、現状の実験系では電流信号を十分なS/Nで捉えることが難しいことが判明しているため、今後はまず、ノイズ低減のための測定系の改善に取り組む予定である。年度後半での光電流赤外励起スペクトルデータ取得を目指す。また、合成したワイル半金属結晶について今年度取得した単結晶X線構造解析の結果と、偏光ラマン分光による結晶格子の振動モードの測定結果の対応を取ることで、簡便な結晶構造同定スキームを確立し、研究を加速する。分担者グループにおいては、昨年度に引き続き、大面積・高品質な量子物質試料作製技術についての研究を進める。年度後半を目処に、分担者グループにおいて作製した試料の赤外光電流測定実験を、代表者グループにて開始する予定である。
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