研究課題
本研究では、カルコゲナイド系層状ワイル半金属において、非従来型の高効率赤外光電変換学理と最適な大面積試料・素子構造を見出すことを中心的課題として研究を進めてきた。代表者グループにおいては、前年度までに最適化したTaIrTe4薄片試料と電極構造および測定系を用いて光電流測定実験を行った。波長4μmの光照射のもとでの光電流の偏光分解空間マッピング測定により、光電流の発生箇所は、一つの電極につき、電極直上と電極から離れた位置の2箇所に存在することが確認され、照射位置により光電流の偏光依存性が異なることがわかった。さらに、光電流の照射偏光分解・空間マッピング測定を行い、照射位置ごとの変調周波数依存性を明らかにした。これらの結果は、光電流の起源として、物質内部の光熱電効果と、トポロジカルな効果に関連すると解釈可能な表面近傍での非線形光学応答の両方が寄与していることを示唆するものである。また、前年度までに合成手法を確立したトポロジカル半金属結晶Co3Sn2S2について、偏光分解ラマン分光により、特定偏光に対応するラマン散乱に、フェルミ面近傍の電子による寄与と、離散的なフォノンによる寄与の干渉によると考えられる、特徴的なFano構造が現れることを見出した。このことは、半金属量子物質の低エネルギー電子状態のプローブとしてのラマン分光の有用性を示すものである。分担者グループにおいては、前年度に引き続き、化学気相成長(CVD)法によるカルコゲナイド系試料の作製についての研究を進めた。特に、大面積化が容易なWTe細線のネットワーク薄膜の物性・構造制御を目指し、異種金属原子のインターカレーションを試みた。具体的には、インジウム原子を真空加熱して昇華させ、WTe束のすき間に挿入可能なことを見出した。このIn原子を含むWTe細線は、フェルミ面近傍で線形なバンド分散を持つことが第一原理計算より予測された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 6件)
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