研究課題/領域番号 |
20H02608
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
若松 孝 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 教授 (80220838)
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研究分担者 |
植 英規 福島工業高等専門学校, 電気電子システム工学科, 教授 (90586851)
尾形 慎 福島大学, 食農学類, 准教授 (10532666)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | タンパク質 / ナノ粒子 / 凝集体 / タンパク質凝集 / 相分離 / 光散乱 / リアルタイム分析 / 顕微分析 |
研究実績の概要 |
タンパク質凝集の評価指標となる拡散係数と構造パラメータ(フラクタル次元)を時間分解で分析評価できるように、前年度構成した分析装置の調整を行い、散乱光動画像の解析プログラムを作成した。対物レンズで集光したレーザ(473nm)を試料へ照射し、局所照射部からの低角度(<6°)の前方散乱光(F-LS)を平行化して、F-LS像をCMOSカメラで動画撮影した。間隔的に得た一群のF-LS動画像から、前方動的・静的散乱光(F-DLS,F-SLS)の各成分を抽出し、F-DLS解析では空間平均化した周波数パワースペクトルと時間相関関数から凝集体の拡散係数を評価し、一方F-SLS解析では、時間平均化した散乱光パターンから構造パラメータを評価した。また、温度に敏感なタンパク質の凝集化分析や凝集・結晶化に伴う溶液中の不均一性に関して局所的分析が行えるように、試料の温度制御と顕微分析に対応する走査機構を設計した。 ポリスチレン粒子(0.1μm,0.5μm)の分散試料を開発装置で分析したところ、時間相関関数の遅延時間は0.2s程度であった。低角度の散乱光計測であるゆえに、低いフレームレート(50fps)での動画撮影でDLS評価が可能であることが分かった。 さらにリゾチーム(HEWL)の結晶化溶液と無結晶化の試料に対し塩添加後からの凝集化分析を行った。F-LS動画像の解析からHEWL凝集体の拡散係数は、結晶化溶液では塩添加後初期に減少しその後安定化して、凝集体がサイズ増加を伴い成長する様子を捉えた。一方、評価構造パラメータは、結晶化溶液では後半に増加する傾向が見られ、結晶化する溶液中でHEWL凝集体の構造が密に変化した。しかし、評価値は従来の平行光照射の分析装置で評価したフラクタル次元(1.6~1.8)に比べて0.4程度と極端に小さい。これは集光照射光による影響が原因であり、散乱光計算の結果から確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに分析装置の基本設計と主要な光学系のセットアップを行い、さらにサンプルの温度制御機構と顕微分析用のサンプル走査機構を設計し、標準粒子の分散系及びリゾチーム凝集・結晶化溶液を用いて、セットアップ装置の基本的な性能テストを行った。また、計測した散乱光動画像の解析プログラムを作成し、散乱光動画像からタンパク質凝集の評価指標となる拡散係数と構造パラメータ(フラクタル次元)を評価した。 しかしながら、開発分析装置でタンパク質凝集体の拡散係数とフラクタル次元について正確な評価が行えるまでには至っていない。これまでの研究開発で明確となった、各分析技術要素とデータ解析法における問題点を解決する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で明確となった、各分析技術要素とデータ解析法における問題点について、セットアップ装置の改良(光学系、サンプルの移動機構等)、及び画像データの解析法の改良(データ抽出、平均操作等)を行う。 さらに、改良分析装置の性能・動作テストのサンプルとしてタンパク質の架橋反応凝集化試料を追加し、タンパク質の結晶化前凝集と架橋反応凝集における凝集化プロセスの相違(凝集体の構造やブラウン運動の経時変化など)について調査する。
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