研究実績の概要 |
前方光散乱動画像の解析による凝集化分析法を確立するために、開発分析装置でポリスチレン標準粒子(PS,サイズ30~100nm)の凝集化を調査した。異なる添加塩濃度の温度一定で、前方静的・動的光散乱(F-SLS,F-DLS)を測定した。F-SLS解析で評価したフラクタル次元Dfの経時変化は、塩濃度依存(0.5~3.0%(w/v))が大きく、時間平均Dfは、凝集体の構造変化を高感度に捉えることが分かった。これに比べて、F-DLS解析で評価した拡散係数Dtの空間的(散乱角)平均値の経時変化は、塩濃度依存性が小さかった。 PS凝集体のDf時間的ヒストグラム解析から得た時間分布は、単一ピークのガウス関数型であることから、その平均値は凝集化に対する構造評価の指標として良く反映する。一方、Dtの空間的ヒストグラム解析による空間分布は、塩添加直後にガウス関数型から崩れ始め、非対称となることが分かった。従って、F-DLS画像によるDtを凝集化の評価指標として用いる場合、その空間分布を考慮した詳細な解析が必要であることが判明した。 また、塩添加によるニワトリ卵白リゾチーム(HEWL)の結晶化前凝集化を開発装置でリアルタイム分析した。結晶化に適する準安定領域でDtは、塩添加直後から減少し始め、時間経過でその揺らぎも小さくなった。一方、Dfは、むしろ遅い時間(約60分後)に増大した。これは、塩添加直後に形成された小さなHEWL凝集体が成長し、疎な構造から密な構造体に変化した。あるいは、電解質作用によりHEWL濃度の高い小さなドロップレットが形成され、その中でHEWL濃度がより高くなり、凝集化が進行したと解釈できる。 本研究で開発したF-SLS・DLS同時計測装置は、液中コロイド粒子の凝集化をリアルタイムで高感度に分析できることが分かった。なお、研究成果を国内学会で発表し、論文投稿の準備中である。
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