研究課題/領域番号 |
20H02609
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
井口 亮 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主任研究員 (40707717)
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研究分担者 |
寺西 貴志 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (90598690)
狩野 旬 岡山大学, 自然科学学域, 准教授 (50375408)
内田 健一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, グループリーダー (50633541)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 誘電体 / 熱電効果 / サーモグラフィ |
研究実績の概要 |
本研究は、誘電体において電場が誘起する熱現象を詳らかにし、誘電体の熱制御の方法や熱応答の理解の刷新を狙うものである。本年度は、サーモグラフィ法を用いて誘電体における縦熱電効果(電場と熱流方向が平行)の温度依存性および物質依存性の計測、そしてその定量化を目指した取り組みを行った。特に、交流サーモグラフィ計測における定量性の確保のため、評価・実験面での取り組みに力を入れた。実験結果の議論を行うためには、交流熱応答から適切な物理量を定量的に抽出する必要があり、既知の電気熱量効果をモデルとして評価法の構築に取り組んだ。熱リークや電気熱量効果そのものの周波数依存性を取り入れた評価法を検討した結果、赤外線カメラ自体の応答の補正も組み入れる必要性が分かった。これに対応した交流サーモグラフィ計測評価法を完成させ、電気熱量効果を対象として論文として公表する準備を進めた。実験面では、誘電体試料の電極および配線の間の接触状態によって、対象とする効果の温度変化量が変わる懸念があり、サーモグラフィ計測および高電圧印加と両立するプロービングシステムを設計し、準備を進めた。また、計画していた異種誘電体接合系における実験も進めた。電気的特性および機械的特性は問題なく、今後詳細な熱測定と解析を進める予定である。加えて、新たに物質依存性測定の一環として開始した単結晶試料を用いた実験においても進展があった。その熱信号は非自明な空間分布を有しており、縦熱電効果において誘電秩序の果たす想定外の役割がある可能性がある。これを明らかにすべく、可視光用の測定系をサーモグラフィと組み合わせた赤外-可視同時計測にも取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
誘電体における熱応答の温度依存性や物質依存性の測定を実現した一方で、これらの定量評価については幾つかの懸念点があり、その解決のために時間と労力を要した。また、物質依存性測定においても想定外の結果が得られ、新たに計画を練り直したため、横熱電効果(電場と熱流が直交)の計測を目指した低温や強磁場下への対応を含めて進捗に遅れがあった。全体としての遅れは軽微であり、次年度に巻き返しを図る。
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今後の研究の推進方策 |
当面、縦熱電効果の温度依存性・物質依存性の解析結果について早期に成果としてまとめることを最優先する。これに向けて、当初はプロービングシステムを用いた電気的配線の接触状態による影響の確認・定量化と異種物質接合系を用いた実験について精力的に取り組む。また、非自明な信号が得られている単結晶試料を用いた実験についても、誘電体における縦熱電応答の解明に向けて、高い優先度で注力する予定である。挑戦的な課題として設定した横熱電効果については遅れているが、まずは上記の縦熱電効果の取りまとめを優先し、全体としての進展を確実にした後で再開する予定である。
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