令和2~3年度の結果を元に,SiO2下地膜が形成された石英ウエハの接合条件を,Ti,Zr,Nb,Hf,Al,Siの各薄膜を用いた原子拡散接合法において,それぞれ最適化した.その結果,いずれの場合も,300℃の熱処理後に,接合強度を示す接合界面の表面自由エネルギーが2 J/m2以上,且つ,光吸収率1%以下の接合界面の実現に成功した.特に,接合界面の表面自由エネルギーは目標値1.5 J/m2を上回る値を得た. さらに,これにより得られた,TiO2,ZrO2,HfO2,Al2O3,SiO2の各アモルファス酸化膜が接合界面に形成された試料について,パルスレーザーを用いたレーザー誘起損傷閾値試験を実施した.その結果,バンドギャップが大きなAl2O3,SiO2を接合界面に有する試料の100%損傷値は,他の試料に比べて大きいことを示した.特に,バンドギャップが最も大きなSiO2試料において100%損傷値が最大となった.これらにより,耐光性の高い接合界面が形成されていることを実証した. また,屈折率調整が可能なSiO2+Nb2O3混合膜を下地膜に用いた場合でも,SiO2下地膜を用いた場合と同様に,大きな接合強度と優れた光透過率が得られることを,Ti膜を用いた接合実験において明らかにしている. これらの結果により,接合する光学ウエハの屈折率に合わせて,下地酸化膜および接合金属の種類を選択することで,完全透明で耐光性の優れた接合界面を有する完全無機の低温接合技術の実現に成功した.この接合技術は,新しい構造の高出力レーザ,高輝度LED等を形成する基盤技術になるものと期待される.
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