研究課題/領域番号 |
20H02617
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中辻 寛 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (80311629)
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研究分担者 |
平山 博之 東京工業大学, 理学院, 教授 (60271582)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 表面電子状態 / ビスマス超薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究では、2次元トポロジカル絶縁体転移が理論予測されている黒リン(BP-like)構造のBi(110)超薄膜を半導体基板上に均一に成長させる条件を見出し、その成長過程・原子構造・電子構造を、走査トンネル顕微鏡(STM)と角度分解光電子分光(ARPES)等の実験手法を用いて詳細に明らかにするため、以下の課題に取り組む。(a) Si(111)傾斜基板を用いたり、成長温度や成長速度を制御したりすることで、回転ドメイン数が少なく膜厚の揃った試料を作製し、電子状態の詳細な測定を行う。(b) Bi(110)超薄膜と基板との界面のwetting layerの原子構造ならびに超薄膜最表面の原子構造を明らかにする。(c) 界面における基板との電荷移動の 詳細を明らかにし、Bi(110)超薄膜への電荷ドーピング制御の可能性を検討する。 令和3年度は次の成果を得た。(a) フラットSi(111)√3-B基板に100 K程度でBiを蒸着後に室温までアニールする2段階成長においては、蒸着直後にアモルファス状の形態であったBi島が昇温と共にBi(110)超薄膜へと結晶化し、膜厚が4 MLに揃っていく過程をSTMで明らかにするとともに、モンテカルロシミュレーションで再現することができた。(c) heavily p-doped, n-dopedおよびheavily n-dopedの3種類のSi(111)√3-B基板に作製したBi(110)超薄膜の電子状態に電荷ドーピングの違いがあることをARPESにて系統的に明らかにした。基板のバンドベンディングのBi蒸着に伴う変化が基板ごとに異なっており、界面でのwetting layerを介した電荷のやりとりについて今後詳細を詰める必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(a) ドメイン数の減少については、9.5°傾斜基板を用いるとある程度減少させられることは昨年度の段階で明らかにしていたが、その後製膜条件を変えてもなかなか良質な膜を得ることはできなかった。しかしながら膜厚制御については2段階成長のプロセスを詳細に明らかにしたことで、達成することができたと考えている。(c) ドーピング条件の異なる基板を用いて、薄膜へのキャリアドーピング制御を系統的に行える可能性があることを示すことができた。以上総合すると、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
(a) 9.5°傾斜基板でどのようにドメイン数が減少しているのかをLEEDやSTMを用いて引き続き明らかにしていく。(c) 半導体的な状態をもつ√3-B基板に替えてSi(111)√3-Ag表面やAg(111)薄膜といった、金属的な状態をもつものを基板に用いてBi(110)超薄膜を作製し、その電子状態をARPESを用いて明らかにする。すでに予備実験にて√3-Ag基板上にBi(110)薄膜が成長することは明らかにできているので、電子状態の解析を通して界面での電荷移動の様子を明らかにする。また、STMを用いて成長過程を明らかにする。
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