本課題では、溶融金属/固体金属界面に形成された合金について、原子間力顕微鏡 (AFM) によって溶融金属/合金界面を原子スケールで分析することを目的としている。代表者:一井は、前年度に続き、まず溶融ガリウム中での温度可変AFM分析に取り組んだ。前年度取り組んだ溶融Ga中でのAu-Ga合金の系については、温度上昇に伴いファセット面が消失し、球形の結晶になることを確認していたが (ラフニング転移)、さらに結晶粒が大きい場合、ラフニング転移温度が上昇することを実験的に見出した。それに伴い、高い温度域でのファセット面での二次元成長のその場 (in situ) 分析に成功した。その結果、温度上昇に対して二次元結晶成長速度が上昇することを確認し、これは理論との定性的な良い一致を示した。さらに溶融ガリウムだけでなく、新たに実用低融点ハンダであるInSn合金 (融点120℃) 中での分析の取り組んだ。まず、このような高い温度域でも低ノイズ・高感度での力検出が可能であることを実証した。さらに、Auと溶融InSnとが接した界面での高分解能観察に成功し、AuIn2結晶が形成されていることが示唆された。また、溶融InSnについても固液界面において非等方的な層状の密度分布 (いわゆる溶媒和構造) を取ることを実証した。 分担者:天野は実験的に得られた溶融ガリウム中でのフォースカーブを液体の統計力学を用いて解析する事で、およその溶媒和構造を計算した。また、小角X線散乱データと液体の統計力学を組み合わせ、液体金属中における親/疎溶媒性プローブー親/疎溶媒性基板間の相互作用を求め、それらとAFM実験データを比較した。さらに、フリーデル振動の無いガリウム原子ーガリウム原子間の二体ポテンシャルを人工的に用意する事で、フリーデル振動こそが液体金属中における特殊な疎溶媒性引力の起源である兆候を見出した。
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