研究実績の概要 |
物質材料や各種デバイスの微細構造評価は研究開発の基盤であり、透過電子顕微鏡法(TEM)は広範に利用されている。近年の先端材料・デバイスでは様々な材料が用いられており、中には観察中の試料損傷が著しくTEMの適用が制限されているものがある。それらのいわゆる”ソフト”マテリアルの材料解析を可能とするTEMの要素技術が必要である。走査透過電子顕微鏡法(STEM)や電子エネルギー損失分光法(EELS)計測において、電子計数できる要素技術を開発するとともに、材料への展開を行ってきた。 本年度は最終年度として、既設装置(EELS用高速CMOS等全5種)の変換効率を加速電圧依存性を含め計測しソフトウエアとして実装した。ソフトマテリアルに有効な低加速用シンチレーターを装置メーカーと検討しCMOS検出器に搭載した。検出限界は専門誌(Ultramicroscopy, 240(2022), 113577)に報告した。 材料応用として、低加速に適した高輝度シンチレーターによる実用材料のEELS計測(APEX 15(2022)076501)、低加速超高分解能EELS計測(PRB 106(2022)195431)、ナノチューブ温度計測(Carbon 201(2022)1025)、高周波計測可能なSTEM計測(Nano Letters 22(2022)10034)のほか、シミュレーションによる非晶質構造解析の検討(AIP Advances 12(2022)095219)等の成果を得た。 検出強度を電子数として定量化できるため、試料損傷や量子ノイズを制御しながら計測ができる。本研究を通して、電子係数がグループ内で一般的な計測とすることができた。定量化した計測結果の一部はNIMSが行っているデータベース(Research Data Express)を通じて一部公表しており、今後も進めていく所存である。
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