研究課題/領域番号 |
20H02626
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中村 優男 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (50525780)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シフト電流 / ハライド / 分子線エピタキシー / 薄膜 / 強誘電体 / 光電変換 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、薄膜デバイス構造でのシフト電流の光電変換の動作実証と、ヘテロ接合を利用した変換効率向上である。今年度は、可視光域に吸収を持つ代表的な強誘電半導体である硫化ヨウ化アンチモン(SbSI)の分子線エピタキシー(MBE)法による薄膜成長に取り組んだ。Sb2S3とSbI3を蒸着源に用い、蒸気圧が極めて高いSbI3に対してはバルブドセルを導入することで安定したフラックス供給を実現した。Sb2S3とSbI3を共蒸着する際のフラックス比を調整し組成を合わせることで、分極方向であるc軸配向SbSI薄膜の作製に初めて成功した。作製した薄膜は、光学測定からバルクとほぼ同じバンドギャップを持つことを確認した。また、圧電力顕微鏡により作製した薄膜が強誘電特性を示すことを明らかにした。 さらに、光電変換素子の作製に必要な透明電極材料の薄膜化にも取り組んだ。SbSIと同じヨウ化物で、かつシフト電流の効率的な取り出しに適したポテンシャルレベルを持つ、代表的なp型透明半導体のヨウ化銅(CuI)を電極材料に選んだ。MBE法を駆使し、基板にCuIと格子整合の良いInAsを用いることで、原子レベルで平坦な単結晶CuI薄膜を作製することに初めて成功した。この際に、低温でまず薄いバッファー層を形成し、その上にさらに高温で成膜することで、薄膜の結晶性が格段に向上することを明らかにした。作製した薄膜のPLスペクトルは、低温で非常にシャープな自由励起子発光を示し、欠陥の少ない極めて結晶性の高い薄膜であることを実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シフト電流光電変換素子の作製に必要な、強誘電半導体のSbSIと透明電極材料のCuIの薄膜成長に成功したことから、本研究における重要な課題がクリアできたといえる。したがって、計画通り順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度に確立したSbSIとCuIの高品質薄膜作製手法を駆使して両者のヘテロ接合を作製し、薄膜ヘテロ構造でのシフト電流のデバイス実証を行う。
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