研究課題
フレネルゾーンプレート搭載のX線顕微鏡(Carl Zeiss Xradia 800 Ultra)にX線透過格子を組み合わせて位相イメージングおよび位相CTのモードを付加することを本課題の主題としている。位相コントラストを生成するためには、位相格子によるself-imaging効果(Talbot効果)を活用するが、Carl Zeiss Xradia 800 UltraではX線の空間的干渉性が不十分であるため、振幅格子と組み合わせたLau干渉計方式に基づく。通常のTalbot干渉計による位相イメージング・CTでは、X線の屈折角検出原理に基づき、微分位相像が計測させる。これに対し、本顕微鏡システムでは顕微鏡拡大率の効果のため、正負の位相シフトの像が特定の距離(シアー距離)だけずれた二重像が生成される。そのため、二重像から単純位相シフト像を再構成するアルゴリズムがあらなに必要となる。二重像のそれぞれは、二光束干渉によって生成されるという光学的理解に基づき、本研究をX線顕微鏡下の二光束干渉に基づく位相イメージングと位置付けてきた。そのためのアルゴリズムを開発するなかで、狭周期の位相格子を製作・搭載し、シアー距離を撮影視野近くまで大きくすることで、二重像の重なりを少なくするアプローチを検討した。同時に、複素デコンボリューション法と名付けた多波干渉を考慮した位相回復アルゴリズムを開発して組合せ、位相像が再構成できることを実証した。ただし、格子の不完全性や光学的近似の制限が理由であると考えられるが、アーチファクトの残存が課題として残っている。逆の発想で、空間的コヒーレンスの制限はあるが、長周期の位相格子を使えば、シアー距離が小さくなり、同じアルゴリズムを用いても、アーチファクトが軽減される可能性がある。そこで、必要な空間的コヒーレンスを確保するために、G0格子をよりDuty比の小さいものに置き換えて実験を行なう事とした。
3: やや遅れている
X線顕微鏡(Carl Zeiss Xradia 800 Ultra)の冷却系の故障が頻発し、G0格子の評価に遅れが発生した。
新しいG0格子として、周期やDuty比の異なる複数のものを調達した。まずはこれら格子の評価とそれらによるX線画像(自己像)のVisibilityと撮影性能、および、必要な露光時間等を調べる。ただし、装置の不具合が継続しており、Carl Zeiss Xradia 800 Ultraを用いずとも可能な研究プランを練る必要があると考えている。具体的には、シンクロトロン放射光を用いたX線顕微鏡において実験を企画するなどの対応である。
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