研究課題
本研究課題では、次世代パワーデバイスの材料として期待される窒化アルミニウム(AlN)のバルク単結晶の液相成長法の研究・開発を行う。本研究では、フラックスとしてNi-Al合金を用いる。Ni-Alは高い融点を有するNiAl化合物を形成することからもわかるように、親和性の高い合金系である。そのため、Niをフラックスとして用いることで、液相中におけるAlの活量が低下し、1800 Kを超えるような高温でも安定的にAlを保持することができる。また、1800から2200 K程度の温度で平衡に近い状態で、AlNの生成反応の駆動力を制御できる。令和3年度は、その前年度に購入した抵抗加熱炉を用い、AlN単結晶の成長実験を行った。本研究課題の結晶成長プロセスでは、融液内の温度分布が成長のキーポイントとなる。成長実験に先立ち、フラックス中の温度分布の測定を行った。その温度分布測定の結果を元に、実験条件を設定し、成長温度を変化させ、太さ約100マイクロメートルの針状のAlN単結晶上へのAlNの結晶成長を試みた。その結果、1時間のプロセスで5から10マイクロメートル分、針状結晶を太さ方向に成長させることに成功した。また、実験と並行して坩堝内の熱流動解析シミュレーションに着手し、炉内の温度分布および流れの可視化およびその最適化に関する研究を開始した。また、令和3年度に、炉内を局所的に冷却する機構を設計・作製した。令和4年度以降、この冷却機構を用いた実験も行っていく。
2: おおむね順調に進展している
おおよそ当初の予定通りに、実験、数値シミュレーション、装置の改造等を行っており、おおむね順調に研究が進展している。
令和3年度に行った研究を継続する。具体的には、種結晶上へのAlN成長の最適化を行うことで、成長速度の向上を目指す。また、数値シミュレーションによる流れの可視化に関する研究も継続し、その成果を元に、炉内治具や構造の検討を行う。また、それと並行し、数値シミュレーションの精度向上に資するフラックス融体の熱物性測定に関する研究も進める。また、令和3年度に作製した局所冷却機構を用いた実験も行い、成長速度の向上を目指す。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Materials Science in Semiconductor Processing
巻: 142 ページ: 106469~106469
10.1016/j.mssp.2022.106469