研究課題
現代社会において電力エネルギーの消費は増大の一途をたどっており、その輸送過程での電力変換技術を担うワイドギャップパワーデバイスが重要となっている。ワイドギャップ半導体の広いバンドギャップと大きい絶縁破壊電界により、低損失・高温で動作するデバイスを作製することが可能となる。現在、SiCやGaNを用いたデバイスが開発されており、一部では実用化もされているが、さらなる高い変換効率を目指すならば、GaNに比べて1.8倍のバンドギャップと3.6倍の絶縁破壊電界を有するAlNがパワーデバイスの材料として最適である。本研究では、AlNバルク単結晶の大量生産技術の開発を目指し、Ni-Alフラックスを用いた新たな液相成長法の研究を行う。本研究では、液相成長のフラックスとしてNi-Al合金を用いる。NiとAlは高い融点を有するNiAl化合物を形成する系であることからもわかるように、親和性の高い合金であり、Ni-Al中のAlの活量は低い。そのため、温度、フラックス組成、雰囲気窒素分圧を適切に選択することにより、結晶成長の駆動力を平衡に近い状態で制御することができる。昨年度までの研究で、太さ100マイクロメートル程度の針状結晶を種結晶として用いた成長実験を実施し、1時間のプロセスで5から10マイクロメートル分、針状のAlN結晶を太らせることに成功した。本年度はさらに結晶成長速度を増大するため、坩堝内により大きな温度分布を付けることができる新たな機構を導入した。その機構を用いてAlNの結晶成長を試みたところ、種結晶上でのAlN成長は見られなかった。しかしながら、フラックスの自由表面には20時間のプロセスで150マイクロメートルの厚さのAlN結晶膜ができていることが確認できた。来年度は、この表面にできたAlNが種結晶上に成長できるような工夫を施し、AlNの単結晶成長を目指す。
2: おおむね順調に進展している
坩堝内に大きな温度分布を形成する機構を導入することで、融液自由表面上でAlN結晶が生成した。来年度はこのAlNを種結晶上へ析出させることを目指す。
来年度は、今年度に導入した温度分布形成機構を用いた研究を継続する。今年度、AlN結晶が基板上ではなく融液の自由表面上に析出した理由は、フラックスの温度(結晶成長の駆動力)が適切でなかったためと考えられる。来年度は、本年度までの知見を元に、結晶成長条件を最適化し、基板上でのAlN成長を目指した研究を行う。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
Materials Science in Semiconductor Processing
巻: 153 ページ: 107167-1-9
10.1016/j.mssp.2022.107167