研究課題/領域番号 |
20H02637
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
太子 敏則 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (90397307)
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研究分担者 |
鈴木 孝臣 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (20196835)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炭化ケイ素 / 溶液成長 / 金属溶媒 / 長尺成長 / 接触角 / 平坦成長 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、まずはSiC基板と金属溶媒の接触角を高温下でその場観察するための、以前から保有していたランプ式加熱炉の改造を実施した。装置に観察窓を増設し、装置を90°回転させて加熱できるようにした。炉外からビデオカメラで撮影し、SiC基板と金属溶媒の界面の接触状況を側面から直接でき、その動画や画像をPCに保存できるようにした。合わせて、観察窓から熱電対を挿入し、基板/金属溶媒界面の温度を測定できるようにした。これらにより、1800℃までの温度でその場観察が可能となり、SiやAlに対してCrの接触角が小さいことがわかった。この結果は、Cr溶媒を用いたSiC溶液成長を実施する場合に、二次元核成長が起こりやすく、成長表面が荒れやすいことに繋がると予想された。 結晶成長では、Cr溶媒に対して、CrにSiやAlを4%まで添加した溶媒を用いてSiCセラミックスを溶質としたMSSG法でSiC溶液成長を実施した。Cr溶媒では成長速度150μm/hでく成長した一方で表面が荒れ、4%Alを添加することで70μm/hの成長速度に対し表面が平坦化することがわかった。この結果は、接触角の測定結果と矛盾せず、SiCと金属溶媒の接触角が成長表面の平坦性に影響を与えることが確認された。 表面の平坦性を維持しつつ成長速度を上昇させるために、溶媒中の対流を解析し、溶質を効率的に輸送することを検討した。結晶成長シミュレーションソフト「CGSim」を用いて炉内構造をモデル化し、金属溶媒中の温度分布および対流解析を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度は、SiCと金属溶媒間の接触角をその場観察するための機構の検討、設計と炉内接触角形成位置の温度の精密測定の方法などを確立することに重点を置いており、それらを実現でき、接触角の測定も1800℃の温度範囲で可能になったことから、最低限の進捗はできたと考えている。 それに加えて、それらの溶媒を用いた結晶成長実験もでき、また、数値解析での輸送効率向上に関する検討にも入れたことから、概ね順調に進展したと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、Alとともに平坦成長が実現できる候補の溶媒を検討する。具体的には、Coであり、この溶媒を含めたSiC基板間の接触角の温度依存性を検討する。 また、それらの溶媒をCr溶媒に加えて、SiCセラミックスを溶質としたMSSG法によるSiC溶液成長実験を行い、平坦化が実現できるかを検討する。 さらに、結晶成長シミュレーションソフト「CGSim」を用いて、金属溶媒中の温度分布および対流解析を深化させ、結晶軸回転速度、るつぼ回転速度が対流に与える影響について検討し、対流が促進される条件下での結晶成長を実施する。
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