研究課題
本研究の目的は、無機キラル化合物の結晶構造のキラリティを制御出来る新規不斉育成手法を開発し、キラル磁性体の新規キラル物性の観測を行うことである。結晶構造のキラリティ制御が困難であることが、キラル磁性体研究における最大の障害となっている。令和3年度において得られた成果は以下の通りである。(a) 無機キラル化合物の不斉結晶育成手法の開発レーザー浮遊帯域炉による浮遊帯域法により無機キラル化合物NbSi2及びTaSi2の大型単結晶育成を実施した。令和2年度は、NbSi2は右手系、TaSi2は左手系に自発的に偏ることを明らかとしたが、令和3年度は傾斜試料棒を用いた浮遊帯域法により右手系NbSi2、左手系TaSi2の単結晶が得られた。つまり、これらの物質において、自然界では困難とされる逆手系キラリティの単結晶の育成に成功したと言える。(b) キラル物性の観測また無機キラル磁性体における高圧下中性子散乱測定をJ-PARCで実施した。これらの測定によりキラル磁性体において圧力印加による磁気周期の変調の観測に成功した。また、無機キラル化合物NbSi2及びTaSi2において電子のスピン偏極現象であるCISS(Chirality-Induced-Spin-Selectivity) 効果の観測に成功した。また、キラル物質での熱応答を含む輸送現象の理論研究を見据え、予備的な研究として、フォノンや磁性状態等での熱応答における理論構築を進めた。結果として、マグノンドラッグによる熱応答等の理論構築を行うことができた。
2: おおむね順調に進展している
レーザー浮遊帯域炉による浮遊帯域法により無機キラル化合物NbSi2及びTaSi2の逆手系キラリティを有する大型単結晶育成に成功した。また、新しいキラル物性の観測を目指した物性測定も当初の計画通りに進行している。
今後も当初の計画に基づいて研究を推進する予定である。無機キラル化合物NbSi2及びTaSi2の逆手系キラリティの単結晶育成に成功した為、これらの物質の順手系及び逆手系キラリティの単結晶を活用したキラル物性の観測を目指す。また、フォノンや強磁性マグノンによるドラッグ効果などについて微視的な理論構築ができたので、今後は、この基礎研究をキラル物質へ応用していく。特に、キラルフォノンがもつフォノンの角運動量が熱輸送に及ぼす効果について、微視的に明らかにすることを目指す。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件) 学会発表 (24件) (うち国際学会 11件、 招待講演 4件)
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