高輝度放射光を100 nmレベルに集光したビームを利用する高分解能ナノビームX線回折による局所逆空間マッピングによるInGaN/GaNヘテロ構造の歪評価は、研究代表者等が世界に先駆けて開発を進めてきた技術である。 本研究は、これまでエネルギー30keVまでのX線でしか利用できなかった放射光高分解能ナノビームX線回折システムを、35 keV以上の高エネルギーX線で利用できるようにするため、新たな集光光学素子を開発し、局所逆空間マップの実空間マッピングとIn蛍光X線マッピングの同時測定を可能にするシステムを構築すること、更にそのシステムを利用し、(1-100)面InGaN/GaN多重量子井戸構造の格子緩和とIn組成ゆらぎの相関関係を解明することを目的にしている。 本年度は、SPring-8のBL13XUの第4実験ハッチに設置されている高分解能ナノビームX線回折装置に作成したSi製屈折レンズを組み込み、ビームサイズと集光効率の測定を行った。その結果、得られたビームサイズは320 nm(垂直方向)×590 nm(水平方向)、光子フラックスは1.0×10^9であった。これらの値は当初目標を充分にクリアした。 この屈折レンズの開発により、局所逆空間マップの実空間マッピングとIn蛍光X線マッピングの同時測定が可能になった。。 一方で、屈折レンズの開発と評価に時間を要し、当初の目標であったInGaN/GaN多重量子井戸構造の格子緩和とIn組成ゆらぎの相関関係を解明するまでには至らなかった。
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