研究実績の概要 |
2021年度は、2020年に確立した高速蛍光/ラマン顕微鏡システムによる超多色イメージングに基づく細胞解析法(iScience 24, 102832 (2021))と、光スイッチングの可能なラマンプローブ(Opt. Lett. 46, 2176 (2021))について論文化を進めた。また、(1) 光スイッチング分子を用いた超解像イメージングのための光学系の構築、(2) 重水素標識したアミノ酸を用いた代謝計測実験、(3) ステージスキャンによる超広視野でのイメージング実験、の3課題の研究を進めた。(1)では、市販の光スイッチング分子CMTEに紫外光・可視光を照射するとともに、そのビームパターンを精密に制御することでラマン応答を変化させる光学系を開発した。(2)では、mMオーダーの濃度の重水素化メチオニンが誘導ラマン散乱で検出可能であることを示すとともに、重水素化メチオニンをHeLa細胞に取り込ませ、その取り込み量とその薬剤応答を計測することに成功した。従来のメチオニン検出用の分子であるアルキン修飾メチオニン(Hpg)と比較して、重水素標識の方が取り込み効率が高いことを示すことができた。これは重水素標識が分子の生化学的特性に影響を与えにくいことに由来すると考えられ、重水素標識の有用性を示す結果である。(3)では、本研究開始当初に存在していた計測システムのバグを丁寧に取り除き、1 mm x 1 mm程度の大面積でのラマンイメージングを数分程度で行えることを確認した。
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