本年度は近赤外波長域に対応した、4方位ワイヤーグリッド偏光子アレイと可視から近赤外波長域に感度を有するイメージセンサーを組み合わせたマルチプレックス分光器の開発を行った。開発装置は、円偏光パルスの円偏光度を計測する用途でも利用ができる。また、前年度までに開発を行ってきた2次元マルチフラグメント運動量画像装置を3次元運動量画像装置へ拡張するために、高速デジタイザを用いてMCP/phosphor検出器から発せられる蛍光を時間信号として取り入れ、時間偏光写像法に加えて、輝点強度と波形ピーク強度の相関関係を用いることで、1 nsの時間分解能で荷電粒子の検出器到達時間を復元することを可能にした。本開発手法では、時間偏光写像法によって質量選別(100 nsの時間分解能に対応)を行ったのち、各質量選別信号に対して輝点強度と波形ピーク強度の相関関係を用いることから、輝点強度が似通った信号においてもロバストにフラグメントイオンの検出器到達時間を同定することができる。さらに、イベント駆動型イメージセンサーを用いることで、従来のイメージセンサーのフレームレート(100から1000 Hz)で制限をされない運動量画像計測法の開発を行った。重心解析によりサブピクセルの空間分解能を得ることができることを確認した。原理的には、数10 kHzのフレームレートでも運動量画像の計測が可能であり、高繰り返し光源を用いた光電子運動量画像の高分解能計測への応用が可能である。
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