研究課題/領域番号 |
20H02662
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
沖田 泰良 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (50401146)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | モンテカルロ法 / 結晶欠陥 / 拡散 / カスケード損傷 / on-the-fly モンテカルロ法 |
研究実績の概要 |
本研究では、各時間ステップで活性化過程探索(SPS)を行いstate-to-stateダイナミクスに基づき時間を進展させる計算手法on-the-fly kinetic Monte Carloの一つであるself-evolving atomistic kinetic Monte Carlo (SEAKMC) を用いて、原子レベルの精緻性を保持しつつ分子動力学(MD)で取り扱えるよりも長い時間スケールの現象を再現する手法の構築を目的とする。特に 計算コストの大半を占めるSPSに対して、新たな高速化スキームである二段階のSPSを採用する加えた。この手法は、2020年度に開発したスキーム、すなわちAV内原子配置とそのSPS結果を保管する機能とは相補的であり、これにより効率的に高速化することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状SEAKMC法の課題として、SPSを実施する領域であるActive volume (AV) の増加とともに計算コストが飛躍的に高くなることが挙げられる。これを踏まえて、2021年度は、まず小さいAVで予備的なSPSを行い、低い計算コストで概略値を求め、この結果を初期値として十分に大きいAVでSPSを開始するスキームを開発した。この二段階SPSを採用するにより、1桁以上の計算コスト削減が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Cuをにおけるカスケード損傷下で形成する自己格子間原子集合体の安定形態への変換過程に対して、開発した高速化SEAKMC法を適用する。 従来のMD計算では、自己格子間原子集合体として、積層欠陥ループ、完全転位ループの他に、実験では観察されないエネルギー的に不安定な不規則形状集合体の形成も確認されてきた。 MD法を超えた時間スケールでは、集合体を形成する自己格子間原子が複数回の拡散をするにより、不規則形状集合体は安定形態へ変換していくと考えられるが、この過程を再現できる計算手法がこれまで存在しなかった。本研究で開発した高速化SEAKMC法を用いて、カスケード損傷下で形成する自己格子間原子集合体の安定形態を初めて定量化することが可能となる。
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