研究実績の概要 |
UO2燃料とジルカロイ被覆管が反応したウラン-ジルコニウム酸化物固溶体および鉄-ウラン酸化物に注目し、有機酸および大気平衡炭酸等の共存下での溶解挙動を評価した。4価U、Zr溶液から生成した水酸化物沈殿を加熱し、固相を調製した。粉末XRDスペクトルのリートベルト解析から、(U,Zr)O2の格子定数はUO2に比べ小さく、ベガード則から計算されるZr固溶量は初期添加量と一致した。XAFS分析ではU-O距離がZr固溶量に対して減少し、XRDの結果と整合した。SEM-EDX分析からZrがUO2に均一に固溶していることを確認した。 調製した固相を天然腐植酸の模擬物質としてジカルボン酸液相に浸漬した結果、フィルタろ過後の液相U濃度が有機酸濃度に対して増加した。低有機酸濃度下ではU濃度は定常状態に達し、熱力学計算から有機酸錯体が支配化学種であることが示唆された。このとき、粉末固相表面のZrは限定的に活性でアモルファス化していると推察された。またUO2と(U,Zr)O2浸漬時のU濃度が一致し、固溶Zrの影響は確認されなかった。一方、高濃度条件では3ヶ月浸漬後も溶解がゆっくり継続し、平衡状態に至らなかった。さらに溶解速度が増加したことから有機酸が固相の溶解を促進していることが分かった。(U,Zr)O2から溶解したU量はUO2に比べ小さく、固溶したZrがUの溶解抑制に寄与した可能性が高い。 さらに処分安全評価上重要な中性pH域のウランジルコニウム固溶体中のウランの挙動について考察した。酸性から中性域では有機酸錯体、中性から塩基性域では炭酸錯体が支配化学種であり、中性pHでは両錯体生成が均衡、競合する可能性が示唆され、本研究における熱力学的考察の重要性を示すことができた。他のプルトニウム等の多価イオン核種もウランと同様の振舞いが想定された。これらの溶解挙動の実験結果および考察を学会等で発表した。
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