研究課題/領域番号 |
20H02673
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
石井 保行 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線高度利用施設部, 課長 (00343905)
|
研究分担者 |
山崎 雄一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (10595060)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | シリコン空孔 / イオンマイクロビーム / 異種イオン混在ビームの発生 |
研究実績の概要 |
次世代パワーデバイス材料の炭化ケイ素半導体(以下、SiCデバイス)の内部の温度や磁場による 電流分布等(以下、物理量)のその場観察が重要である。現在その方法がないが、有力なのは、SiCデバイス内のSi空孔(以下、Vsi)からの発光波長の変化から物理量を測定する量子センシング技術である。本研究では、代表者らが開発した単一種類ガスイオンのkeVサブミクロンビーム形成装置を基に、異種ガスイオンを混在させたkeVサブミクロンビームを形成し、一回の照射でSiCデバイス内の深度が異なる複数の重要要素にVsiを製作する照射技術の開発を試みる。 初年度(令和2年度)の研究目標は、単一種類ガスイオンビーム装置に設置されているイオン源と同じ既存のデュオプラズマトロン型イオン源を用いて、異種ガスイオンを混在させたイオンビームを発生させその性質を調べる。その後、今回の研究に適したイオン源を開発することである。これを行うため、既存のデュオプラズマ型イオン源を分析電磁石が設置されているテストベンチに設置して動作するようにした。実際にこのイオン源にそれぞれ水素(H2)、ヘリウム(He)及びアルゴン(Ar)のガスを導入して、異種イオンの発生の実験を行い、その性質として、イオン種分析を行った。この結果、水素ガス単独で、2原子(H2)イオンと3原子(H3)イオンのビーム電流を、またHeガスとArガスの異種イオンの混合で、HeイオンとArイオンのビーム電流をそれぞれ同時に発生できることが分かった。これらの実験結果を基に、異種イオンビームを発生しやすくしたイオン源を開発した。また、最終年度に行う異種ガスイオンを混合したイオンマイクロビームのSiCデバイスへの照射の先行研究として、そのデバイスの深さ方向の各機能部位に適した深度で止まるイオン種の選定を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に研究目標は、既存のイオン源を用いて、異種ガスイオンを混在させたイオンビームを発生させその性質を調べる。その後、今回の研究に適したイオン源を開発することとした。これに対して、研究の概要に記述した通り、令和2年度の研究目標をほぼ達成したため、概ね順調であるとした。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度に開発したイオン源から異種ガスイオンが混在したイオンビームを引き出し、ビーム電流、異種イオンの混在率等のイオンマイクロビーム形成に必要なイオンビームの性質を調べる。さらに、このビームとこれまでのイオン源で発生した水素イオンビームと比較して、マイクロビーム形成にて適したビームが発生できるようにイオン源を改良する。また、Vsiの製作に適したイオンの混合割合になるよう、異種ガスイオンの混合の割合を調節する。一方、最終年度に行う異種ガスイオンを混合したイオンマイクロビームのSiCデバイスへの照射の先行研究として、引き続きそのビームの照射方法等の検討を進める。
|