研究課題
本研究の目的は,新生代初期の温室地球における高品位レアアース泥の成因を解明することである.そのために,温室地球で生じた海底堆積物の広域地球化学データセットの構築,多変量統計解析と同位体分析による環境・物質循環変動の痕跡の抽出,および上記項目の成果を制約条件とした海洋元素マスバランス計算によるレアアース泥生成過程の定量的検討を行う.2022年度は,北太平洋ODP Site 1215コア試料およびインド洋ODP Site 738コア試料のバリウム同位体分析結果の解析を行った.その結果,各サイトにおける温暖化に伴う生物生産性の変動が復元された.また,古第三紀の複数の温暖化イベントにおける大陸化学風化の増大を示すインド洋ODP Site 752コア試料のオスミウム同位体分析結果を査読付論文として公表した.また,IODP Site U1553コア試料の全岩化学分析,炭素・酸素同位体分析,CaCO3含有量分析を完了し,独立成分分析およびクラスター分析による統計解析を行った.その結果,短期的な温暖化イベントにおいてレアアース濃集が生じていること,堆積物の全岩化学組成の特徴が長期的に変化していることが見いだされた.さらに,太平洋全体を対象とした海洋-堆積物間の元素マスバランス計算を行い,古第三紀の環境条件における海底堆積物へのレアアース濃集要因についてシミュレーションに基づく検討を実施した.その結果,大陸風化や炭酸塩補償深度の変化のみでは古第三紀の高品位レアアース泥の生成が説明されず,生物生産性の変動が重要な役割を果たしたことが示唆された.また,北西太平洋のレアアース泥から分離した生物源アパタイトの化学組成の統計解析により,超高濃度レアアース泥の生成には海洋表層の生物生産性の増加を伴う海洋環境変動が寄与したことを示す新たな証拠を提示し,査読付論文として公表を行った.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
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