本研究課題の目的は、数理計画モデルにより、再生可能エネルギー大量導入シミュレーションを行い、それを実現するための具体的な再エネ大量導入シナリオを提示することにある。令和4年度は需要家側の柔軟性(デマンドレスポンス)を考慮した最適電源構成モデルを構築し、再生可能エネルギー大量導入に関する数値シミュレーション分析を主に実施した。その結果、デマンドレスポンスの導入規模の拡大につれて、再エネ大量導入時に調整力の役割を担う水素発電、ならびに、揚水や系統用蓄電池の充放電量が減少し、太陽光発電の出力抑制量も減少する一方、風力発電や太陽光発電の導入量が増加する傾向を確認し、需要の柔軟性が再エネ大量導入に大きく貢献する可能性を定量的に確認した。このため、電力需要の柔軟性の向上は、調整力への投資の低減、再エネの導入拡大や有効利用に貢献する可能性があると考えられる。加えて、再生可能エネルギーの余剰電力により水電解で製造した水素や、大気中より直接空気回収技術(DAC)により回収した炭素を利用して合成した石油化学財(ナフサなど石油系原材料)や合成石油燃料を考慮したエネルギー需給モデルを開発し、再生可能エネルギーの部門横断的利用の可能性に関して、さらに精度を高めた分析を実施した。日本において2050年カーボンニュートラル制約の下で、数値シミュレーションを行った結果、再エネに起因した余剰電力を活用した二酸化炭素の原材料への固定は、経済合理的な技術オプションになりうることを定量的に確認することができた。
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