研究課題/領域番号 |
20H02686
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
新家 寛正 北海道大学, 低温科学研究所, 非常勤研究員 (40768983)
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研究分担者 |
後藤 和泰 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (40821690)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Optical Chirality / キラル結晶化 / 近接場 / 表面プラズモン共鳴 / Mie共鳴 |
研究実績の概要 |
本研究では、電磁場のカイラリティの尺度を表す保存量である「Optical Chirality」の勾配を起源とする光学力による鏡像体選択的な光学捕捉技術により、水溶液中の分子クラスターを鏡像体選択的に濃集し鏡像対称性の破れを伴う結晶核形成を人為的に誘起することで本来熱力学的に等価な結晶鏡像異性体を熱力学的に区別し、相転移を記述する上で基本的な量である化学ポテンシャルにカイラリティの概念を導入することを目的としている。これまで共同研究により三角形金属ナノ粒子三量体構造への円偏光照射により励振される表面プラズモン共鳴の近接場中で塩素酸ナトリウム(NaClO3)キラル結晶化を誘起するとその核形成頻度に大きな左右非対称性が見られることを明らかにしてきた。当該年度では、三角形金属ナノ粒子三量体構造への円偏光照射により励振されるプラズモン近接場の電磁場解析を行い、その近接場において局所的に大きなOptical Chiralityの増強が見られることを明らかにした。また、この局所的に増強されたOptical Chiralityの空間勾配を起源として水溶液中のNaClO3キラル結晶クラスターに働く鏡像体選択的な光学力がキラル核形成のカイネティクスに左右非対称な影響を及ぼす可能性を示すことができた。この成果をアメリカ化学会発行の国際学術誌The Journal of Physical Chemistry Cに発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で円偏光照射された銀ナノ粒子凝集体や三角形金ナノ粒子三量体を核形成サイトとした水溶液からの塩素酸ナトリウムキラル結晶化の核形成頻度に大きな鏡像体過剰率が見られることが明らかとなっていた。しかし、この核形成頻度における鏡像体過剰とOptical Chiralityとの具体的な関係は明らかではなかった。当該年度の電磁場解析により、両者をキラル結晶クラスターに働く鏡像体選択的なOptical Chirality勾配力に基づいて具体的に関係づけることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究で、三角形金ナノ粒子三量体への円偏光照射により発生する表面プラズモン共鳴の近接場に局所的に著しいOptical Chirality増強が見られることを明らかにした。この局所的に増強されたOCにより、塩素酸ナトリウムキラル結晶クラスターには、そのカイラリティパラメータを0.0001から0.001と仮定すると、キラル核形成における鏡像体選択に有意と思われる大きさの鏡像体選択的光学力が働くことを明らかにした。しかし、キラル近接場との相互作用を考慮したカイラリティパラメータは不明である。今後、結晶キラリティとキラル近接場との相互作用におけるカイラリティパラメータを決定するための実験系を構築する。また、表面プラズモン共鳴の近接場と比較して左右非対称性の大きなキラル近接場の発生が期待される誘電体ナノ構造体のMie共鳴の近接場中でのキラル結晶化実験に取り組む。
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