研究課題
本研究では、電磁場のカイラリティの尺度を表す保存量である「Optical Chirality」の勾配を起源とする光学力による鏡像体選択的な光学捕捉技術により、水溶液中の分子クラスターを鏡像体選択的に濃集し鏡像対称性の破れを伴う結晶核形成を人為的に誘起することで、本来熱力学的に等価な結晶鏡像異性体を熱力学的に区別し相転移を記述する上で基本的な量である化学ポテンシャルにカイラリティの概念を導入することを目的としている。これまでの研究で、金属ナノ構造体への光照射により励振する表面プラズモン共鳴の近接場を活用しOptical Chiralityの局所的な増強を得ることで、水溶液からの塩素酸ナトリウムキラル結晶化の核形成頻度おいて円偏光のみでは得られない大きな鏡像異性体過剰が見られる可能性を示し、近接場励振による局所的なOptical Chirality増強に伴い水溶液中の結晶クラスターに働く鏡像体選択的な光学力の、結晶核形成カイネティクスに及ぼす影響が大きな鏡像体過剰率の原因である可能性を示してきた。一方で、表面プラズモン近接場における電場増強が鏡像体選択性に悪影響を及ぼす可能性がある。そこで、当該年度では、金属ナノ構造体の表面プラズモン共鳴の近接場に比べて、電場増強を抑制しながらの大きな左右非対称性を示す光場の形成が期待される誘電体ナノ構造体のMie共鳴の近接場を活用するため、誘電体としてシリコン(Si)を用いたナノ構造体作製プロセスの構築に取り組んだ。その結果、およそ500nm四方の大きさの卍型の誘電体ナノ構造体の作製プロセスを構築した。今後、構築したプロセスを基に作製した誘電体ナノ構造体を用いて、鏡像対称性の破れを伴う結晶核形成の実験を行う。
4: 遅れている
2021年度において研究代表者に2回の異動があり実験環境整備などに注力したため、研究計画よりも研究の進捗状況が遅れている、
金属ナノ構造体の表面プラズモン共鳴を用いた結晶化実験における大きな鏡像体過剰率の発生のメカニズムの追及を行うとともに、誘電体ナノ構造体のMie共鳴を用いた結晶化実験を行う。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件)
The Journal of Colloid & Interface Science
巻: 608 ページ: 873-881
10.1016/j.jcis.2021.10.041
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
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