研究課題
タンパク質の物理化学研究の難しさは、タンパク質の構造と機能の多様性にあり、普遍的な原理を見つけにくい点にある。そこで、本研究ではタンパク質の共通構造に着目した。ロドプシンタンパク質の多くは、共通の発色団および共通の立体構造を持ちつつ、プロトン、ナトリウムイオン、塩化物イオンなど、タンパク質ごとに多様なイオンを選択的に輸送する。これらについて、光励起に誘起された発色団構造の変化を比較した。さらに、イオン輸送の過程でのαヘリックスの向きの変化することも比較した。αヘリックスの向きの変化は、そのヘリックスおよび隣接するヘリックスに存在するアミノ酸残基のイオン親和性に大きな摂動を与えるため、イオン輸送において重要な役割を果たすと考えられる。プロトン輸送、ナトリウムイオン輸送、塩化物イオン輸送の光駆動イオン輸送タンパク質の間で構造変化の比較を行い、ヘリックスの運動にどのような違いがあるのかを明らかにした。酸素運搬タンパク質の多くは、共通のサブユニット構造を持ちつつ、多様な会合様式によって協同性を示す。これらのうち一部のタンパク質について、酸素分子の結合・解離に伴ってαヘリックスの向きが大きく変化することが示唆されている。αヘリックスの向きの変化は、サブユニットの構造を変化させ、さらにサブユニット接合部位の構造を変化させる。接合部位の構造変化は協同的に各サブユニットの酸素親和性を変化させるため、協同的な酸素親和性発現において重要な役割を果たすと考えられる。そこで、ヘリックスに含まれるトリプトファン残基の共鳴ラマンバンドおよびアミドバンドの時間分解観測を行い、酸素分子の脱離後、αヘリックスに逐次的にどのような動きが起きるかを調べた。会合様式が異なる酸素運搬タンパク質の間で構造変化の比較を行い、ヘリックスとサブユニット接合部位とのカップリングにどのような違いがあるのかを明らかにした。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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