研究課題/領域番号 |
20H02695
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
水野 操 大阪大学, 理学研究科, 助教 (10464257)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 時間分解紫外共鳴ラマン分光法 / タンパク質ダイナミクス / 分子光スイッチング |
研究実績の概要 |
タンパク質の機能は、外部刺激による構造変化により生み出される。タンパク質機能を生み出す過渡的な分子運動の観測には、反応のタイミングが同期した分子アンサンブルのスペクトルを計測し、時間的精度が高い良質なスペクトルを得る必要である。これに対して、光による反応タイミングの制御がきわめて有効である。実際に、光受容タンパク質では光が外部刺激として構造変化を誘発するため、反応中間体の構造研究が多く行われている。一方、多くのタンパク質では、機能発現スイッチに光が利用されることはなく、時間的精度が高いダイナミクス観測が困難であった。 本研究では、機能発現スイッチとして光反応により分子長や電荷分布が変化する小分子をタンパク質に導入し、反応タイミングの同期を行う(分子光スイッチング)。光によって誘起したタンパク質構造変化のダイナミクスを、芳香族アミノ酸残基および主鎖に由来するラマンバンドをプローブとして、時間分解紫外共鳴ラマン分光法により観測する。これにより、原子レベルの空間スケールかつピコ秒からサブ秒までの幅広い時間スケールで、機能発現に関わる構造ダイナミクスを観測する手法を確立する。 本年度は、マイクロ秒からサブ秒の時間領域における時間分解紫外共鳴ラマン分光法によるタンパク質ダイナミクス計測の実証実験を、まず光受容タンパク質である微生物型ロドプシンをもちいて実証した。これと先行研究の成果を加えると、ピコ秒からミリ秒までの非常に幅広い時間スケールのタンパク質構造変化の観測方法を確立し、分子光スイッチングによるタンパク質ダイナミクス観測の基盤が整った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症流行のため、光スイッチングタンパク質作製について、試料作製のアドバイスを受けるための外部機関の研究者との研究協力が順調に進まなかった。しかし、所属機関内で推進することが可能な分光システム開発が進み、スペクトル計測における実験基盤が整った。
|
今後の研究の推進方策 |
研究対象となる光スイッチングタンパク質(分子認識・分子ゲート・基質結合アロステリック制御)を作製し、タンパク質ダイナミクス観測を行い、それらの機能発現における分子機構を解明する。
|